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【江戸時代を学ぶ】 時間の概念と時刻の呼び方 〈25JKI00〉

時鐘/数読み法とは・・・

もう一つの不定時法には、時鐘/数読み法がある。実際には鐘の音の数で時刻を伝えた。

庶民が耳で聞いて時刻を数えるために向いているこの方法は、明るさの基準となる日の出30分前、晴れた夜空に星が見えなくなる時刻を「明け六ツ(あけむつ)」とし、日が暮れて30分後、星が見え始める時刻を「暮れ六ツ(くれむつ)」といった。

そして「明け六つ」以降の昼と「暮れ六つ」以降の夜を各々6つに分けて、昼夜ともに順に、六ツ、五ツ、四ツ、と時刻が進み、正午や午前0時が九ツとなり、更に八ツ、七ツ、と数えて1日24時間となった。また、1日の始まりの深夜0時からみると、「暁(あかつき)九つ」から「朝四つ」までの半日、次の正午「昼九つ」から「夜四つ」までの半日と併せて1日24時間となる。

この数え方は少々解り難いが、易の考え方に由来しているという。中国の易学(陰陽説)で、縁起の良い活力ある数字として特別に尊んでいたのが「九」だった。

そこで実際の時刻の呼び方では、この「九」を半日の時刻に対応した1から6に乗じて、その十の位を省いたというのだ。そうすると一の位は9、8、と順に減りやがて4となり、そこでまた9に戻って次の半日が始まる。また最大の6×9では54にもなり、これでは鐘を撞くのも聞き取るのも大変なので、十の位を取り除いて時刻を表したとされる。

既に述べた様に、この時鐘/数読み法は鐘の音で時刻を知らせた方法がそのまま時刻の名前となったのだが、江戸の府内に数か所設けられていた官許の鐘撞堂、所謂「時の鐘」は、先ずは捨て鐘として三打して周囲の注意を引き付けた後、次に実際の時刻の数を撞いた。例えば「六つ」時であれば、三回撞いた後に(最初はゆっくりと徐々に早く)六回鐘を打った。

時の鐘の第一号は、江戸初期に日本橋本石町に設置され、他には浅草寺を含めた9ケ所に時の鐘が設けられた。其々に鐘撞役がいて、鐘撞きの費用は周辺の町々から徴収したり、寄付等でまかなわれたようだ。(一般庶民は時の鐘が設置されるまでは、江戸城の登城を知らせる太鼓などで時刻を知ったともいい、また上野寛永寺の鐘が最初に撞かれ、他の時の鐘はそれに続いたとの説もある)

↓時鐘/数読み法

暁(あかつき)九つ 午前0時頃 昼九つ 正午12時頃
暁八つ 午前2時頃 昼八つ 午後2時頃
暁七つ 午前4時頃 昼七つ 午後4時頃
明(あけ)六つ 午前6時頃(日の出30分前) 暮(くれ)六つ 午後6時頃(日没30分後)
朝五つ 午前8時頃 夜五つ 午後8時頃
朝四つ 午前10時頃 夜四つ 午後10時頃

 

江戸時代の時間と暮らし・・・

天保期の俗謡『はねだ節』で「お江戸日本橋七つ立ち~」と謡われているが、西進する大名行列が早朝4時頃に日本橋を出立した場合、日の出を迎えた高輪あたりで提灯を消したという。また大名行列と限らず、日の在る内に出来るだけ多くの距離を歩かなければならない旅人は、日の出前に早出をしたのだ。そして「昼七つ」の終わる頃から「暮れ六つ」前には、危険な夜間の移動を避けて宿屋に入る様にしていた。

また「明六つ」には長屋の木戸は開門し、商店や湯屋、芝居小屋などが開店した。「朝五つ」になる頃には職人たちは仕事に出かけ、庶民は「昼八つ」には間食を摂り(現在の3時の『おやつ』の起源)、「昼七つ」が終わる頃には仕事仕舞いとなった。その後、「暮れ六つ」には一般の商店は閉店し、吉原夜見世が始まる。そして「夜四つ」には木戸が閉門した。

尚、江戸時代初期は一般に朝夕の一日二食であり、現在の様に一般庶民が一日三食となるのは元禄時代以降と云われている。 「昼八つ」時に軽い間食をしたのだといわれ、現在の昼食に当たると考えられる。武家などでは、朝夕に加え夜食と食す場合が多く、上士の場合は別途、昼間に菓子や茶を喫した。

 

江戸時代の人々にとっては、その生活や仕事の中心は陽が昇り落ちる迄の昼間の時間帯であり、不定時法が当時の時間の概念としては、大変、理に適っていたのだろう。

明るくなったら起きて仕事を始め、暗くなったら休み寝る。貴重な灯油のムダ使いも出来ない。やはり不定時法の方が分かり易く、自然の法則に沿った合理的な時間の概念だったと考えられるのだ・・・。

当時は30分よりも小さな時間の単位は無いのだから、当然、一分一秒を争う様なこともなく、現代人にはうらやましいことに、きっと時間はゆったりと流れていたのだろう・・・。

-終-

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