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《ゆるカワ絵師列伝》 松屋 耳鳥斎の巻 〈25JKI37〉

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安永9年(1780年)の作品 『絵本水や空』より

最近、巷では“江戸絵画の大ブーム”が到来している様ですネ。若冲や其一はもとより、大御所の浮世絵師たち(例えば国貞・国芳に葛飾北斎etc.)に関しても、次々に大掛かりな展覧会が開催されています。

そんな中で、私は現代の“ギャグ系ほのぼのマンガ”にも通じる画風を持った、江戸時代の“ゆるくてカワイイ絵を書く画家”たちに着目しています。

そこで新連載として、この様な“ゆるカワ絵師”たちを順に紹介していこうと思い、先ずは最も代表的な作家として『松屋 耳鳥齋』を取り上げたいと思います・・・。

 

耳鳥齋(読みは「にちょうさい」または「じちょうさい」、以下の表記は耳鳥斎とします)は、江戸時代中期~後期にかけての浮世絵師で戯画作者・画家です。宝暦元年(1751年)もしくはそれ以前に生まれた可能性が高いとされ、安永年間から享和年間にかけて活動しており、享和2年(1802年)から享和3年(1803年)頃に亡くなったと推測されています。

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安永9年(1780年)の作品 『絵本水や空』より

江戸時代・安永期から享和頃の大坂画壇の中でも、とりわけユニ-クな存在なのが耳鳥斎です。本姓は不明ですが、通称は松屋平三郎といい、彼の住居は大坂・京町堀または江戸堀辺りであったとされています。元々の家業は酒造業でしたが、業績が振るわず破産の後に骨董商を営みました。

耳鳥斎の絵画の師匠は狩野派の小柴隼人との説がありますが、彼の作品には狩野派の影響は殆ど見られないとされています。

本格的に絵を描き始めたのは、骨董商になってからと推測(大久保常麿 著 『松屋耳鳥斎』による)されていますが、鳥羽僧正覚猷(かくゆう)を手本とした戯画を得意とし、扇絵や絵本で人気を博しました。

また彼は、画家としての名声以外にも素人浄瑠璃では名人級との評判を得ており、そのことは当時の大坂ではかなり知られていた様子です。

※鳥羽僧正覚猷は、1053年に源隆国(宇治大納言)の第9子として生まれて、やがて第47世天台座主となった平安時代後期の高僧です。宗教界の重鎮でありながら、当時の社会の成り立ちに対して鋭い風刺精神を持ち、且つまたユーモアと笑いのセンスに長けた人物でした。従来より、国宝の『鳥獣人物戯画』(鳥獣戯画)絵巻や『放屁合戦』・『陽物くらべ』等の作者ではないかとされてきましたが、近年ではそれを疑問視する説も有力です。

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安永9年(1780年)の作品 『絵本水や空』より

また専門の研究者からは、上記の鳥羽僧正に端を発した鳥羽絵はもとより、江戸中期の画僧・古磵明譽や画家で芸人の英一蝶、そして与謝蕪村の戯画・俳画からの影響を指摘されていますが、最近ではとりわけ蕪村の作品からインスパイアされたのではないか? との意見が多い様です。

鳥羽絵とは、江戸時代の中期から明治時代にかけて流行った浮世絵の様式のひとつで滑稽な絵のことで、一般的に「江戸時代の漫画」とも云われる略画体の戯画を指します。またこの呼び名は、前述の鳥羽僧正の作とされる『鳥獣人物戯画』(鳥獣戯画)絵巻に由来するとされています。また鳥羽絵は近・現代の漫画にも通じるものがあり、北尾政美の『略画式』や葛飾北斎 の『北斎漫画』などを経て、ジョルジュ・フェルディナン・ビゴ-(Georges Ferdinand Bigot)の世相風刺雑誌である『トバエ(TÔBAÉ)』やポンチ絵へと影響を与えていきました。ちなみにトバエという言葉は大正期頃まではそのものずばり漫画のことを意味しており、そのことからも後世に与えた影響力の大きさが窺えます。世界に類を見ないといわれる漫画/マンガ文化を有する我国ですが、そのルーツは大変長く、この鳥羽絵の時代から培われて来たものなのです。尚、ポンチ絵とは、風刺や寓意を込めた滑稽な絵や漫画のことですが、概略図や構想図のことで、イラストや図表を使用して概要をまとめた企画書などの意味にも使われます。語源は英国の風刺漫画雑誌『パンチ(Punch)』からとも、またはこれにならって文久2年(1862年)頃に英国人チャールズ・ワーグマン(Charles Wirgman)が横浜で発刊した漫画雑誌の『ジャパン・パンチ(The Japan Punch)』からとも云いわれます。

※古磵明譽は、江戸時代前期から中期にかけて活動した浄土宗の画僧。京都の報恩寺の第15代住職で、号には虚舟など。仏教画以外にも山水画や人物画などの水墨画も多数あります。

※英一蝶は、江戸時代中期(元禄期)の画家で芸人です。英派(一蝶流とも)と呼ばれる流派の総帥。

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