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《和菓子探訪》 日本三大銘菓 〈2085JKI27〉

『山川』 (山川・朝汐本舗風流堂HPより)

3.  『山川』
【由来・逸話】 山陰の古都・松江にある風流堂の『山川』は、上白糖と寒梅粉を使った紅白の落雁です。赤は紅葉に映える山を白は清き川のせせらぎを表したとされ、出雲・松江藩の第7代藩主松平治郷の詠んだ歌、「散るは浮き、散らぬは沈む紅葉の、影は高尾の山川の水」が由来となって命名されたとされています。また、『山川』は手で割ると、写真の用に凸凹とした形になりますが、この様子が“山川”に見える為とも伝わります。

さて治郷は、経済改革による藩政立て直しの功で松江藩中興の祖とも云われ、また茶人としても名高い人物です。文化3年(1806年)の隠居後に剃髪して名乗った号を『不昧』と言い、以後は不昧公として親しまれました。

諸事(料理、書道、作庭など)に秀でた不昧公でしたが、特にその茶人としての才能は一流であり、大名茶の石州流を学んだ後に自ら不昧流を興しました。彼の収集した茶道具の銘品の数々(『雲州名物』)は大変有名で、また茶の湯の“添え菓子”として和菓子作りを大変奨励し、その結果生まれた銘菓(『山川』や『若草』など)も「不昧公御好み」として現在にも伝えられています。

さて江戸時代の『山川』は、松江藩の御用菓子司を務めていた三津屋が代々受け継いで製造していたそうですが、やがてはその製造・販売は途絶えてしまうのでした。ちなみに、三津屋が作っていた『山川』は、煎り米粉と阿波の和三盆糖を使用し、型枠で打ち固めて仕上げられた薄紅色の落雁だったと伝わり、現在の様な紅白の落雁ではなかったともされます。

風流堂初代の内藤竹次郎が、もともと営んでいた海運業が廃れた為、商売替えで菓子屋を始めたのは明治23年(1890年)でした。その後、大正の始め頃に当時の町の有力者の集まり”どうだら会”から、町興しの一環として、「不昧公御好み」の中にあったが、この頃は既に作られなくなっていた菓子『山川』について、風流堂2代目店主の内藤隆平に復刻製造が依頼されました。

江戸時代の菓子である『山川』は、幕末から明治期への時代の変革の中で製法が失われていました。そこで隆平は、わずかに残された文献を読み漁り、古老や茶人を訪ねてたり、原材料となる寒梅粉の製法を調べたりと苦労の末に、ようやくにして『山川』の復刻に成功しました。

この様に『山川』の復刻には多くの困難が待ち受けていましたが、内藤隆平は復刻後にはその技術を他の菓子店にも広く伝えています。彼は、当初の地域振興の目的を忘れてはいなかったのですネ。

尚、『山川』は季節や時期により赤白を上下にしたり、間にはさんだりしては変化を交えて茶席に供したと伝えられています。

【材料・製法】 既に述べたように明治期に入ると作られることもなくなり廃れてしまいましたが、風流堂2代目の内藤隆平がこれを再現したのが現在の銘菓『山川』です。材料は砂糖(上白糖)に寒梅粉、若干の食塩にわずかな着色料となっています。これらを混ぜて練り合わせて型にはめて、乾燥させることで出来上がります。しかし完全に乾燥した干菓子とは異なり、しっとりとした食感を残っているのも大きな特徴です。

また余談になりますが、『山川』に使用されている寒梅粉は、餅米を蒸してついた餅を焼き色が付かないように焙煎し、それを細かく製粉した粉です。この名前の由来は、梅が咲く寒い時期に新米を粉にした事から名付けられました。肌理の細かさ毎に等級が存在しており、主に落雁や押し菓子、豆菓子などの和菓子に使用されます。尚、同様の製法で作られる微塵粉(みじん)粉は、寒梅粉よりも粒子が粗いタイプのことです。他にも餅米から作られる粉は多く、白玉の材料になる白玉粉(『越乃雪』の寒晒粉はこの仲間)や水浸けした餅米を蒸して乾燥させ粗挽きにした道明寺粉などがあります。

【評価・実食】 『山川』は『長生殿』等に比べると随分と見た目にも柔らかく、実際に食べてみても硬さはなくて、サラサラとした砂糖の触感が勝るそうです。また味も『長生殿』よりも甘くしっとりとした感じですが、そこはかとない仄かな塩味が特徴と聞きました。最初に口に含んだ時の感触は多少しっかりとしていますが、やがて口の中でゆっくりと溶けていき、義姉の場合(後述)は最後は意外にスッキリと、そしてさっぱりとした後味だった様で、見た目以上に、二つ目・三つ目と食べたくなるから不思議だとのこと。但し、人によっては口が乾くと思われるのでお茶は絶対に必要だそうです。

紅白の落雁は、どちらもほぼ同じ味の様ですが、紅色の方は僅かながら桜味かも知れません。裏側には切れ込みがあって、そこを目安に包丁等で切り分けて食べると良いようです。

製造元も「抹茶本来の風味を引き立てる」としていますが、この『山川』を口にふくんだ時、意外にもササッと溶けて嫌みな甘味が尾を引かず、抹茶の風味を最高に引き出すところが不昧公の好みだったと伝わっています。当たり前かも知れませんが、総じて落雁は日常的なおやつというよりも、やはり茶席の添え菓子なんだろうと思うし、是非とも抹茶と一緒に頂きたいものです。

尚、通常の砂糖使用の『山川』以外にも、和三盆を使った『古代山川』もあります。また前述の通り風流堂の内藤隆平が製造法を公開した御蔭で、『山川』は風流堂以外でも彩雲堂・三英堂等の和菓子店で作られています。

この菓子も、色々な店が扱っているし、風流堂の通販や百貨店から取り寄せも可能です。尚、日持ちは10~15日とされています。

山川・朝汐本舗風流堂HP・・・はこちらから

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