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共通通話表(フォネティックコード)と無線通話符牒 〈3JKI07〉

無線による交信では、混信したり電波の状態が良くないことで文字や言葉が聞き取り難い場合がある。また話し手の発音次第では聞き間違えやすい語もあり、そこで昔から、この様なことでの間違いや誤りを避ける為に、軍事・警察用語や航空用語として共通の通話表(“フォネティックコード”)が使われてきた。

先日、ある会合で欧米のテレビ番組や映画などにも頻繁に登場するこれらの用語についての質問を頂いたのを機会に、Kijidasu!でもその代表的なものを紹介したいと思い記事とした…。

 

国際的に認知された最初のフォネティックコードは、1927年に国際電気通信連合(ITU)により制定されたが、5年ほど使用された結果の課題や問題点を反映して1932年には改訂されている。そしてこの結果はICAN(ICAOの前身)にも採り入れられ、民間航空の業界では第二次世界大戦まで使用されていた。また、国際海事機関(IMO)では1965年まで使い続けたとされている。

軍用系で正式なものとしては1940年に第二次世界大戦に参戦した連合国軍が、共同作戦を遂行する為に制定した共通の”Allied Code(連合軍コード)”があり、これが“陸・海軍用フォネティックコード”の発展に繋がったとされている。但し、これとは別系統のコードとして、英国空軍独自の“フォネティックコード”の一部も平行して使われ続けた。

また“NATOフォネティックコード”というものが存在するが、このコードは第二次世界大戦後にNATO(北大西洋条約機構)加盟国の各海軍艦艇から編成されるNATO連合艦隊(多国籍任務部隊)で採用された『Allied Tactical Publication ATP-1, Volume II: Allied Maritime Signal and Maneuvering Book』で規定されていたもので、同書のもとになったINTERCOの国際信号書『International Code of Signals』では、旗旒信号・発光信号・モールス符号なども制定していた。その為、有線・無線電話による音声通話に使用する為のコードである本コードは、敢えて区別する為に「音声によるコード」という意味で“フォネティックコード(音声コード)”と呼ばれる様になったのだ。

これらは本来は軍事用に考案されたものだったが、往時はアマチュア無線の世界でも同コードを標準・共通コードとして使っていた。その名残として、現在でもこの中の一部の語句を使用するアマチュア無線家も存在している。

 

陸・海軍用フォネティックコード(カッコ内は日本語読み)
A:Able(エイブル)  B:Baker(ベーカー) C:Charlie(チャーリー) D:Dog(ドッグ) E:Easy(イージー) F:Fox(フォックス) G:George(ジョージ) H:How(ハウ) I:Item(アイテム) J:Jig(ジッグ) K:King(キング) L:Love(ラブ) M:Mike(マイク) N:Nan(ナーン) O:Oboe(オーボォ) P:Peter(ピーター) Q:Queen(クイーン) R:Roger(ロジャー) S:Sugar(シュガー) T:Tare(テェア) U:Uncle(アンクル) V:Victor(ビクター) W:William(ウイリアム) X:X-ray(エクスレイ) Y:Yoke(ヨーク) Z:Zebra(セブラ)

※第二次世界大戦中の米軍使用タイプ……A:Able B:Baker C:Charlie D:Dog E:Easy F:Fox G:George H:How I:Item J:Jack K:King L:Love M:Mike N:Nancy O:Oboe P:Peter Q:Queen R:Rodger S:Suger T:Tiger U:Uncle V:Victory W:Whisky X:X-lay Y:York Z:Zebra

※ベトナム戦争中の米軍使用タイプ……A:Alpha B:Bravo  C:Charley  D:Delta E:Echo F:Foxtrot  G:Golf  H:Hotel I:India J:Juliet K:Kilo L:Lima M:Mike N:November O:Oscar  P:Papa Q:Quebec  R:Romeo  S:Sierra T:Tango U:Uniform V:Victor W:Whiskey X:X-Ray Y:Yankee Z:Zulu

 

NATOフォネティックコード(カッコ内は日本語読み)
A:Alfa(アルファ) B:Bravo(ブラボー) C:Charlie(チャーリー) D:Delta(デルタ) E:Echo(エコー) F:Foxtrot(フォックストロット) G:Golf(ゴルフ) H:Hotel(ホテル) I:India(インディア) J:Juliett(ジュリエット) K:Kilo(キロ) L:Lima(リマ) M:Mike(マイク) N:November(ノベンバー) O:Oscar(オスカー) P:Papa(パパ) Q:Quebec(ケベック) R:Romeo(ロメオ) S:Sierra(シエラ) T:Tango(タンゴ) U:Uniform(ユニフォーム) V:Victor(ビクター) W:Whiskey(ウイスキー) X:X-ray(エックスレイ)  Y:Yankee(ヤンキー) Z:Zulu(ズールー)

尚、上記の通話表は国際民間航空機関(ICAO)により1956年3月1日に公表されたものと同じである。その後、国際電気通信連合(ITU)が直ちにこれを採用した事は、1959年のITU無線規定に既に通話表として記載されている為に疑う余地は無い。無線通信に関する国際的な取り決めはITUが行う事となっているので、軍・民間、アマチュア無線(ARRL:アメリカ・アマチュア無線連盟)によって公的に使われる様になる。しかし国際海事機関(IMO)においては1965年になり、やっと採用が決定した。

またICAOが航空無線用に考案したコードがあるが、混信中でも聞き間違えることなく国際的(非英語圏)にも分かりやすい語句が選択された。この航空用コードが現在でも広く使用されている共通通話表の原型となっており、その後、ITUの勧告により、IMOやFAA(アメリカ連邦航空局)、そしてANSI(米国規格協会)などの諸機関も含めた全ての通信に使用されるように決められた。尚、このICAOのコードのA to Zは上記の“NATOフォネティックコード”と同じで、事実上は同一といってよい。

※英語式の綴りでは A:Alpha となるが、世界標準となるITU制定のコードでは Alfa が採用されている。

※具体的な使用方法は、例えば「ABC…」と伝えたい場合は通常は「alfa bravo charlie…」となる。会話として「Aは alfaのA」といった形で話す場合は「A for alfa」又は「A as in alfa」が一般的だ。

※米国の空港では、“Delta”がデルタ航空のコールサインである為に使用が避けられており、代替の表現として“Dixie ディキシー(水兵)”が使われるのが一般的とされている。

※我国の新幹線でも、席番号のA – Eを表す際に「アメリカ・ボストン・チャイナ・デンマーク・イングランド」といった符牒を用いるらしい。

※英軍でのスラングには、“ack-ack”:対空砲(Anti-Aircraft)などがある。ack はAの意。これらのコードは民間にも浸透していた為に通常の会話にも定着した例がある。例えば「良くやった!」を “Bravo Zulu” (BZ)と言う場合や、かつてベルリンが東西分割されていた際の “Checkpoint Charlie”(C検問所)が有名だ。

※SWAT(Special Weapons And Tactics)などの特殊部隊では、“Tango (T”) は標的 (target)を、“Sierra(S)”は狙撃手(sniper)を意味するが、他にも“Sierra green light” (狙撃班、実力行使を許可する)、“Tango down” (標的を射殺した)、“Cease-fire” (撃ち方止め)などの表現がある。

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