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【古今東西名将列伝】 エーリヒ・フォン・マンシュタイン(Erich von Manstein)将軍の巻 (中) 〈3JKI07〉

独軍装甲部隊による電撃戦の開始

前編に引き続き、知将・マンシュタインの生涯を描く【古今東西名将列伝】は、中編として第2次世界大戦の勃発からセヴァストポリ要塞を攻略してクリミア戦を終えるところまで筆を進めてみよう。

役職・階級でいうと、南方軍集団参謀長(中将/51歳)から第11軍司令官(上級大将/54歳)までの時期となる…。

 

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マンシュタインは、1939年8月18日にポーランド侵攻に備えてカール・ルドルフ・ゲルト・フォン・ルントシュテット(Karl Rudolf Gerd von Rundstedt)上級大将(後に元帥)指揮の南方軍集団参謀長に任命された。そしてこのポーランド戦に於いて、南方軍集団参謀長の彼はその水際立った作戦指導により、大きく評価されたのだった。

フォン・ルントシュテット元帥

この時、マンシュタインはポーランドをソ連との事実上の緩衝地帯と想定、またポーランド戦が長引くことでドイツが東西の二正面作戦に引き摺り込まれることを懸念していたので、早々と『白の場合(Fall Weiß)』(ポーランド侵攻作戦の秘匿名称)に決着を着けるべきだと考えていた。その為には、ポーランド政府並びに同軍部の、イギリスやフランスなどの同盟国の参戦迄耐えて彼らとドイツを挟撃することによる戦争全体の持久化を目論んだ戦争方針を打ち破る様な、極めて短期決戦が必要であったのだった。

そこでポーランド侵攻に際して、マンシュタインは進撃速度が高く打撃力のある装甲部隊の大半をヴァルター・フォン・ライヒェナウ(Walter von Reichenau)砲兵大将(最終階級は元帥)指揮下の第10軍に集中配備し、ヴァイクセル川西岸のポーランド軍を包囲して殲滅するという作戦計画を立案した。

またこの計画では南方軍集団所属の他の2個軍、即ちヴィルヘルム・リスト(Wilhelm List)上級大将(最終階級は元帥)が指揮する第14軍(この後、第12軍に編成替え)とヨハネス・アルブレヒト・ブラスコヴィッツ(Johannes Albrecht Blaskowitz)歩兵大将(後に上級大将)旗下の第8軍がライヒェナウの第10軍の側面をそれぞれ防御しながらポーランドの首都ワルシャワに進攻する事となっていた。

ブラスコヴィッツが指揮する第8軍はウッチ市へ向け東進、リストの第14軍はクラクフ市へ向けて前進しカルパチア山系側面を迂回して進撃、そして主力のライヒェナウが率いる第10軍は快速の装甲部隊と共に中央に位置して敵軍に決定的な打撃を与えながらポーランドの中心部へと推し進むのだ…。

第2次世界大戦の勃発

こうしてポーランド戦は1939年9月1日に開始され、順調に進展した。南方軍集団の管轄地域では、第10軍に所属する装甲部隊は撤退するポーランド軍を追撃、防御態勢に入る余裕を与えなかった。更に第10軍の側面を進撃した第8軍はウッチ、ラドム、ポズナニのポーランド軍を攻撃・粉砕した。

マンシュタインはヴァイクセル川からワルシャワへ進攻するという当初の計画を変更し、ラドムのポーランド軍の包囲することをルントシュテットに進言した。そしてこの作戦は成功して、ワルシャワ南部での組織的なポーランド軍の抵抗は瓦解したのだった。

こうして成功裏に終結を迎えたポーランド侵攻作戦であったが、現実にはドイツ軍の考え方はまだまだ保守的であって、19世紀にクラウゼヴィッツ(Clausewitz、『戦争論』で有名はプロイセンの軍事学者)によって提唱された伝統的な殲滅戦理論に即したものと云えた。つまり実際のところは“電撃戦”と称するには、指揮官・兵の思想や練度も未だ不十分であったし装備も貧弱なものばかりで、戦車とは名ばかりの1号や2号にチェコ製の戦車が主体であり、ハインツ・グデーリアン(後述)は後に「まさかこれら訓練用戦車で大戦に突入するとは思ってもみなかった…」と語っている。

ところで、独軍がポーランドに侵攻した事態を受けて、9月3日には英国とフランスはドイツに宣戦布告をしたが、フランスとドイツの国境地帯(アルザス=ロレーヌ地区)においては実際の戦闘は発生せず、暫くの期間はフランス人が言うところの「奇妙な戦争」・「まやかし戦争」の様相を呈していた。そしてその直後、1939年10月24日に新設されたA軍集団においても、司令官のルントシュテットと参謀長であるマンシュタインのコンビは継続することになった。

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