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【弾道ミサイルの監視役】 ミサイル追跡艦 ハワード・O・ローレンツェン 〈3JKI07〉

ミサイル追跡艦 『ハワード・O・ローレンツェン』 2014年5月撮影

緊迫の度を増す朝鮮半島情勢だが、北朝鮮の中長距離ミサイル(IRBM)や大陸間弾道弾(ICBM)の追尾・監視を任務とするアメリカ合衆国海軍のミサイル追跡艦が、『ハワード・O・ローレンツェン(USNS Howard O. Lorenzen T-AGM-25)』である。

2012年に就役して以来、最新鋭の追跡艦として北朝鮮の弾道ミサイル監視役を続けている。

 

『ハワード・O・ローレンツェン(USNS Howard O. Lorenzen、T-AGM-25)』は、米海軍のミサイル追跡艦である。ミサイル追跡用の大型レーダーを上構の上と艦上楼の後部に各1基(合計2基)搭載し、敵のミサイルを数千km(4,000kmとも)先まで追尾できる能力を有している。また艦名は、電子偵察(ELINT、エリント)技術の向上に貢献したアメリカ合衆国海軍研究所(US Naval Research Laboratory、USNRL)の今は亡き電子技師 ハワード・O・ローレンツェン(Howard O. Lorenzen)に由来している。

戦闘目的の軍艦ではない為、その塗色と相俟って軍艦らしかなぬ少々頼りなさげな印象がある半面、艦橋から煙突部を挟んで後部にかけた上構部分の巨大な構造物が極めて目立つ姿をしている。そしてその要目は、基準排水量:12,575t 全長:162.8m 全幅:27m 主機:ディーゼル発電機4基、発動機2機 出力:20,155馬力 速力:20ノット 乗組員:30名以上+科学技術者46名以上(合計90名弱)となっている。

ミサイル追跡艦『オブザヴェーション・アイランド 』 2006年7月撮影

本艦は、“コブラ・ジュディ・レーダーシステム”搭載の『オブザヴェーション・アイランド (USNS Observation Island、T-AGM-23)』(2014年3月退役)が老朽化したことを受けて、代替・後継艦として2012年1月10日に就役した。本艦も『オブザヴェーション・アイランド』と同様に米海軍の軍事海上輸送コマンド(Military Sealift Command, MSC)に所属し、海軍軍人と民間技術者が協力して、更にアメリカ空軍の支援(レーダーの操作を担当)を得て任務を実施しているが、煙突の黄色と青色の線は「民間人が乗艦・勤務中」という事を表わし、乗組員の中に民間の研究員も含まれている状況を表示しているとされる。

米海軍によると、ミサイル監視用レーダー装置(新型の“コブラ・キング・レーダーシステム”)として、艦首楼部分にテレメトリー(遠隔測定)電波受信用アンテナを収めた球状ドーム(レドーム)が2個と、艦体中央部から後部甲板にかけて巨大な平面状のアンテナが縦置き旋回式で前後2基設置されており、中央構造物上に設置されたSバンド方式のレーダーが目標探知・捕捉用であり、後部甲板に設けられたXバンド方式のレーダーが目標追尾用とされている。何れも最新鋭のアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーで、長距離探索用のSバンド・レーダーの送受信モジュールは『オブザヴェーション・アイランド』より3,000個以上も多い15,360個と増加し探知能力が大幅に向上、また追尾用Xバンド・レーダーは海上から宇宙空間までの野球ボール大の物体を遥か約4,000kmの地点まで探知可能な能力を有すると云われている。

※Sバンド・レーダーとXバンド・レーダーの配置を逆とする資料も多く、特定出来ないとするものもあるが、本記事では中央部レーダーをS方式(探知・捕捉用)、後部レーダーをX方式(追尾・追跡用)とする説を採用した。

 

ミサイル追跡艦『インヴィンシブル』

ちなみに他のミサイル追跡艦には、小型の『インヴィンシブル(USNS Invincible、T-AGM-24)』(基準排水量:2,285t 全長:68.3m)があり、こちらは元音響測定艦で、退役後に改装を施して2000年4月にミサイル追跡艦として再就役して現在に至る。コブラ・ジェミニ・レーダーを装備。『ハワード・O・ローレンツェン』と同様に北朝鮮のミサイル監視を目的として日本海や黄海、北東太平洋に展開、我国の横須賀港や佐世保港に寄航することも多い。

SBM 2006年撮影

また尚、米海軍では艦船以外の、石油リグを改造した自走可能なプラットフォーム(全長116m、全幅73m、排水量は50,340t、推定探知距離は5,000km)上に、大型のX バンド・フェーズド・アレイ・レーダー(SBX)を搭載したものを建造して北太平洋上に配備しているが、これが朝鮮半島沖でのミサイル監視任務に就くこともあるようだ。

 

これらの追跡艦の活動が頻繁になるとミサイル発射のタイミングが迫ってきた証だそうだが、最近では何時発射されてもおかしくない状況が続き、“今そこにある危機”=有事への我々の不感症/マンネリ化が恐ろしい今日この頃である。

-終-

 

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