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【書評:あんな本・こんな本】 謎本ブームの先駆け『ウルトラマン研究序説』 〈130JKI15〉

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この本はサブカルを対象とした「謎本」というか「〇〇読本ブーム」の火付役。その後、類似の本がたくさん発行されました。

筆者の手元にあるものは、中経出版の1992年3月3日の第23刷(第1刷は1991年12月6日)ですが、以降も版を重ねて40万部の大ベストセラーとなりました。

後々、好評価ばかりではなく批判の声もありましたが、発刊当時としてはそのアプローチは画期的な考察本だったと思います。

 

『ウルトラマン』とは、TBS系テレビ局で1966年(昭和41年)7月17日~1967年(昭和42年)4月9日にかけて毎週日曜日夜7時~7時30分に放送された(子供向け)特撮テレビ番組のこと、もしくは、その劇中に登場する主人公の巨大変身ヒーローの名前です。

特撮で有名な円谷プロダクションが制作し、全39話がカラー作品として放映されました。後(のち)にシリーズ化されたため、本作品は「初代ウルトラマン(初代・マン)」と呼ばれます。

この番組は同じく円谷プロダクションが制作した『ウルトラQ』のある意味続編で、巨大な怪獣や宇宙人によって引き起こされる災害や地球侵略から人類と地球を守り、そして超常現象などの解決に当たる国際的な組織である科学特捜隊(以下、科特隊)と、そして科特隊と共に地球を守るべく戦うM78星雲・光の国からやって来た(宇宙警備隊員の)ウルトラマンの活躍を描く物語です。

現在観ても、50年近く前のテレビ番組であるにもかかわらず、この「初代ウルトラマン」のクオリティは素晴らしく、その後の特撮ヒーローもの番組の礎を創った作品といえます。

 

「初代ウルトラマン」の放送当時の平均視聴率は36.8%、最高視聴率は42.8%(1967年3月26日放送の第37話。ビデオリサーチ調べ、関東地区)とのことで、現代の感覚では驚きの高水準です。

『ウルトラマン』は、当時のお茶の間を沸かせた超人気番組であり、まさに子供たちの「ヒーロー」の代名詞でしたが、本放送終了後もその人気が衰えることがなく、最初の再放送でも平均視聴率が18%台を記録したといわれています。

もちろん、TV放送以外の周辺ビジネスでも、玩具だけでなく菓子類やその他の生活用品全般にわたり、様々な分野で『ウルトラマン』関連のキャラクター商品が発売され成功をおさめてきました。

この様に『ウルトラマン』は、、その後のヒーローもの特撮作品に計り知れない影響を与えた傑作であったことは間違いありません。

 

『ウルトラマン研究序説』とは、当時の若手研究者ら25名が集って共同執筆したウルトラマン考察本です。「SUPER STRINGS サーフライダー21」という名義で1991年に中経出版から刊行され、通算40万部のベストセラーとなり謎本ブームの先駆けとなった書籍です。(後に扶桑社から文庫本化されています)

本書は、その後の彼らの『あしたのジョー心理学概論』、『エヴァンゲリオン極限心理分析』や『ゴジラ生物学序説』とか『経営は「鬼平」に学べ』など、対象テーマが多方面に広がる考察本シリーズの出版第1作となりました。そしてこのシリーズは成功した第1作を踏襲し、社会・人文・自然科学を網羅するメソッドを駆使して様々なテーマに対する分析を試みていきます。そこにはライトな感覚ながら学術的真剣さが垣間見えることが特色であり、最大の魅力でもありました。

『ウルトラマン研究序説』の場合は、ウルトラマンや怪獣の行動により影響を受ける社会問題、被害総額や経済波及効果、科特隊の人事や組織と装備の実態など、架空のウルトラマン世界を現実世界に当てはめて、しっかりと学術的に論じていることが大きな話題となりました。

物語では、地球の平和のために戦うウルトラマンと科特隊ですが、ウルトラマンと科特隊の「正義」とは、怪獣たちにも「人権」はあるのか、などの『ウルトラマン』に関する素朴な疑問点を正攻法で、法律から自然科学までの各分野の若手研究者らが極力論理的に検証し、自論を述べていきます。たかが子供向けTV番組の、しかも架空の世界のヒーローの「正義」や怪獣の「人権」問題など、本来、議論すること自体が無意味でばかばかしい事を取り上げて、高度な知的ゲームをめざした執筆者たちの真面目な解説が繰り広げられていました。

 

【目次】

第一章  科特隊、その組織戦略と管理にみる人事戦略

第二章  科特隊、その法務戦略およびハヤタ隊員の法的考察

第三章  科特隊、その財務戦略と怪獣出現による経済への波及効果

第四章  科特隊、その技術開発戦略

第五章  科特隊、そのシステム戦略

終章  「科特隊型」組織が社会を変えるヒントになる!? ― ウルトラマンの「働く意味」と科特隊の組織目的

 

個人的には、第一章の「ウルトラマンの正義と怪獣の『人権』問題」や第二章「ハヤタ隊員はウルトラマンによる建造物破壊について刑事責任を負うか」と「怪獣にも『権利』はあるか」、第三章の「ウルトラマンによって倒された怪獣(宇宙人)の死体処理は誰が行なうべきか」などが面白くインパクトがありました。

また女性の社会進出が課題となっている現在、第一章の「フジアキコの『その後』を考える」は大変参考になると思います。昭和40年代の初頭において、彼女のような働く女性を造形した『ウルトラマン』制作スタッフの先見性というか、そのセンスは素晴らしいとしか言いようがありません。その他としては、同じく第一章の「未成年ホシノ君の雇用形態」が気になるところです。

科学技術を論じた記事としては、第三章「ウルトラマン変身のメカニズム」、第四章の「科特隊の技術開発思想と『人口・仮想環境システム』」や「科特隊のR&DにおけるCADシステムの利用」などが面白く、第五章の「“宇宙語翻訳装置”開発の可能性」も記憶に残っています。

尚、第二章では科特隊の存在に関する憲法論議が行われていて、現在ならば集団的自衛権の行使問題もからめて、より論議が盛り上がる項目だったかも知れません。

執筆者の専門分野は、法律全般から政治哲学、経営戦略・経営管理学、素粒子物理学や情報処理工学、エネルギー物理学や遺伝子工学などと多岐に渡っており、当時としてはなかなか読み応えのある内容だったと思えます。

 

この本のカバーの折り返しには、「こんなときあなたはどうしますか?」という疑問が書かれています。

・もしあなたの家が怪獣と戦っているウルトラマンに壊されたら、あなたはどこに損害賠償請求をしたらいいのでしょう?

・もしあなたが朝、出かけるとき、自宅の玄関の前に怪獣の死体が転がっていたとしたら、あなたはどこに届けを出しますか?どこが死体処理を行うべきと思いますか?

 

ムッム。たしかに、どうすればいいのか分かりませんネ。損害賠償の請求は地方自治体でしょうか? 死体の届け出は警察か消防署?保健所じゃないだろうし、もしかしたら自衛隊?

そう言えば、日本政府も米連邦緊急事態管理庁(FEMA)をモデルに、一元化された全国的な災害対策の組織を設置する方針のようですが、一刻も早く、日本版サンダーバードもしくは科特隊かウルトラ警備隊が必要なんです!! きっと(笑)。

-終-

【書評:あんな本・こんな本】 再びゴジラ・ブーム到来の中で『ゴジラ対自衛隊』を読む!!・・・はこちらから

 

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