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「空母」を考える(3) 『いずも』の本当の姿は強襲揚陸艦? 〈3JKI07〉

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合衆国海軍強襲揚陸艦 バターン (合衆国海軍撮影)

あくまで通常の「空母」ではない『いずも』の本当の姿は何なのか?

それは、「強襲揚陸艦」という艦種が最も近いかも知れない。

 

 【強襲揚陸艦とは】

強襲揚陸艦とは、ヘリコプターやエアクッション型揚陸艇(LCAC)などの各種上陸用舟艇を搭載し運用する能力を持つ艦種で、上陸作戦や空輸能力に秀でている。その大半は、全通飛行甲板により大規模なヘリコプター運用能力を持ち、また垂直離着陸機(STOVL)を搭載していることで強力な攻撃/迎撃力をも有する。そして陸上戦闘のための兵員や車両を多数積載・移送することが可能だ。更に、ヘリコプターのみを搭載運用しているヘリコプター搭載艦(まさしく『いずも』)も強襲揚陸艦と呼ばれることがあり、ウェルドックを持つものが多い。尚、ウェルドック とは艦尾の喫水線レベルに開閉口を有するデッキ状のドック式格納庫のことである。

強襲揚陸艦は実際のところ多任務軽空母的な性格であり・・・

外見は、どこからどう見ても「空母」だ!!

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フランス海軍の『ウラガン』 ウェルドックを開いて舟艇を回収中

強襲揚陸艦では、ウェルドック内に収容している舟艇に対して物資や兵員を随時搬送が可能(但しLCACにあらかじめ揚陸物資を搭載してからドックに収めるのが一般的)で、ドックに注水して氾水させることで揚陸艦外に舟艇等を直接発進させることができる。特にエアクッション型揚陸艇(LCAC)を運用したいのであるならば、ウェルドックは不可欠である。LCACは重戦車も積載可能で速度が大変高速な上に、揚陸可能な海岸線(平坦な砂浜などが最適)が広範であるという利点を活用できる、揚陸艇の切り札だ。

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「LCAC」の写真 撮影:合衆国海軍

しかし、『いずも』はウェルドックを持っていない。つまり残念ながら、LCACの運用は出来ないのだ。

 

【合衆国海軍の最新鋭強襲揚陸艦『アメリカ』】

ところが合衆国海軍の最新鋭強襲揚陸艦である『アメリカ』級も、このウェルドック機能を持っていない。

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合衆国海軍の新鋭強襲揚陸艦は『アメリカ』

 

強襲揚陸艦アメリカ』性能緒元

基準排水量  44,971t

満載排水量  44,971t

全長  257.3m

全幅    32.3m

速度  22ノット

乗員  1,059名 (揚陸部隊1,687名)

搭載機   ヘリコプター30機、STOVL攻撃機23機

搭載機種(予定)  ハリアーⅡ、F-35B、MV-22B、CH-53E/K、UH-1Y、MH-60S、AH-1W/Zなど

 

『アメリカ』級の強襲揚陸艦は、航空機の運用を最重視したトレードオフ検討の結果、(建造費削減の為もあってか)ウェルドックを廃止してその代わりに航空機搭載・運用力を大幅に強化したとされている。しかし揚陸能力の弱体化を危惧した合衆国海兵隊からの強い要望で、クラス3番艦以降はウェルドックを再び装備しLCACを運用できるよう設計変更すると発表された。

『アメリカ』級のベースは『ワスプ』級、その前クラスは『タラワ』級強襲揚陸艦であるが、外観はほぼ同様である。(つまり見た目は「空母」だ) いずれもウェルドック機能を保持し満載排水量は4万tを超え、有事に即応できるように独立戦術単位の1個海兵大体を迅速に揚陸できる。

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『アメリカ』級2番艦の『トリポリ』完成予想図

『アメリカ』級の1・2番艦は、ウェルドックのない強襲揚陸艦ということでは海上自衛隊の『いずも』と同様ながら、航空兵装が圧倒的に強大で、まさに「空母」ではないだろうか? STOVL戦闘攻撃機を多数運用可能なのだからネ・・・。

尚、合衆国海軍の場合だと、全通飛行甲板を持たない『サン・アントニオ』級や『ホイッドビー・アイランド』級ドック型揚陸艦もある。このタイプは外観上も「空母」には見えない。海上自衛隊のウェルドック保有のドック型揚陸艦は『おおすみ』級輸送艦であるが、これは逆に「空母」に似たシルエットをしている。

 

【機動揚陸プラットフォーム『MSC  モントフォード・ポイント』】

さて、輸送や各種支援・メンテナンスを目的にした艦種としては、洋上前方設置艦として、また揚陸支援艦としての機動揚陸プラットフォーム『MSC モントフォード・ポイント』が斬新だ。

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機動揚陸プラットフォーム『モントフォード・ポイント』

揚陸任務時の海上基地となるFLO-FLO(浮沈揚塔)機能を持つ。満載排水量は81,435t、全長255.1m、速度は15ノットで、ヘリコプター発着甲板を持ち、LCACを3隻収容可能だが商船仕様である。尚、FLO発動時には艦全体が沈下して上図の赤い部分が海面下に浸かる構造だ。(性能諸元については諸説あり)

結局、『いずも』が「空母」かどうかの議論には決着はつかないなぁ。米国の強襲揚陸艦くらいデカくてSTOVLを多数運用できるのならば、「空母」でしょ!と言えるのだが・・・。諸外国には「強襲揚陸艦兼軽空母」と正式に名乗っている艦もあるしネ。結論は、見た目では判断出来ないと言うことだナ。そこで取り合えずは「輸送能力の高い多目的ヘリコプター搭載護衛艦」としておこう。

-終-

※記事アイコン/サムネイルの写真は、海上自衛隊HPの写真ギャラリーより転載

他の連載記事は こちらから ⇒ “「空母」を考える ”シリーズ

 

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