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【超入門】 Jazz~ マイルス・デイビス、『リラクシン(Relaxin’)』でリラックス!! 〈12JKI00〉

リラクシン5412BvpKCOLL._SX425_マイルスの「マラソン=セッション/ing 4部作」の中から、先ず最初にどれを紹介するか少しばかり悩んだが、最もリラックスした雰囲気が伝わる、その名も『リラクシン』を選んだ。

レッド・ガーランドの名演とマイルスの絶妙なミュート・プレイが堪能できる、まさしく名作だ!!

 

第一期黄金クインテットとマラソン=セッション

マイルス・デイビス(tp)は1955年、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)といった豪華メンバーで(第一期)クインテットを結成した。

当時、彼はプレスティッジ・レーベルと契約していたが、より待遇や条件の良いメジャー・レーベルであるコロムビア・レコードとの契約を希望していた。そして翌1956年には密かに録音していた、移籍第一作『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』を発表することになる。

しかし、その一方で、プレスティッジとの間に残されたレコード録音の契約を履行するために、アルバム4枚分のレコーディングをわずか2日間の強行軍で行った。

これが俗に「マラソン=セッション」と呼ばれるもので、全24曲(+1曲)がワンテイクで録られた。しかし連続した2日間ではなく、2回のセッションに分かれて実施されており、その間には約5ヶ月のブランクがあった。

マイルス551EPRoCR9dL._SX425_これらの演奏は『ワーキン』『スティーミン』『リラクシン』『クッキン』の4枚のアルバムに収録され、その後、プレスティッジはこの4枚を毎年1枚ずつ4年間をわたり発売していくことになる。ちなみに、最後の1枚は録音から5年後の発売となったが、ジャズ専門のダウンビート誌で最高の五つ星の評価を獲得している。

また内1曲の『ラウンド・ミッドナイト』のみが、『マイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』に収録されている。

『リラクシン(Relaxin’)』概要 

『リラクシン』は、上記のマラソン=セッション4部作と呼ばれる内の1枚だ。

同じセッションからシャッフルされた為に、演奏レベルは4枚ともにそれほどの差は無いのだが、特に本作は、馴染みのあるスタンダード曲、こころ安らぐバラード曲、そして、ややハードなオリジナル曲と選曲のバランスが良く、またマイルスのミュート・トランペットが冴えわたっている。

そして、曲間にスタジオ内での会話を収録しているのが大きな魅力であり、ところどころに入るマイルスの指示やメンバーの声などが素顔の彼らを知る手がかりともなっている上に、一層、リラックスした雰囲気を盛り上げている。

尚、ジャケットのデザインだが、この現代絵画のような三角形をモチーフとした「横たわる女性象」は、マイルス自身が書いた絵を基にしたものと言われている。

ミュート最高

タイトル通り、リラックスした中でマイルスの洒落たミュート・プレイが連続して楽しめるのが特徴。

数あるモダン・ジャズのアルバムの中でもミュート・トランペットを楽しむには本アルバムにかなうものはないだろう、とも云われている。それほど、この『リラクシン』でのマイルスのミュート・ソロは絶品だ。

尚、当時、彼のミュート奏法は大変繊細でリリカルなことで有名で、「卵の殻の上を歩くマイルス」などとも呼ばれていた。

成長過程の巨人コルトレーン

まだまだ発展途上だったコルトレーン、いま一つの演奏が続く中、そんな彼をじっくり我慢して使っているマイルス。この時期のコルトレーンを敢えて起用したあたりに、マイルスの先見の明と音楽的なセンスが垣間見られる 。

結果論かも知れないが、当時のコルトレーンのゴツゴツとした野太いフレーズが、マイルスの流麗な演奏と対照的で、効果的な対比を醸し出しているとも云われる。

しかし正直なところ、筆者としては、未熟過ぎるコルトレーンがもう少し自分の奏法を確立していたらなぁ、と思わずにはいられない。

但し、前述の通り、一連のマラソン=セッションは1956年5月11日と1956年10月26日の都合二回分かれていて、コルトレーンの10月セッションでの上達ぶりは異常ともいえる程だ、という識者の意見も多い。

才能を育てる資質

マイルスというと、強烈な個性のせいか独善的で強面(こわもて)のイメージがあるが、彼ほど忍耐強く、丁寧に若いミュージシャンを育てる才能に溢れていた人はいない。

マイルスは若くて可能性のあるミュージシャンを自らのバンドに招聘しては、その才能を開花させて、素晴らしいジャズ・ジャイアンツへと育てあげていった。

この『リラクシン』では、コルトレーンだけではなく、常に目立ちたがるフィリー・ジョー・ジョーンズあたりも、マイルスにしっかりとコントロールされながら素晴らしい演奏をみせてくれる。

マイルスが優秀なインプロヴァイザーであることは間違いないが、このクインテットでの彼は、トランペッターとしてのプレイのみならずリーダーとしての資質が極めて高いことを教えてくれる。

曲目の紹介

『リラクシン』の録音は1956年の5月11日と10月26日の2日間 、ヴアン・ゲルダー・スタジオにて行われた。尚、発売は1958年にプレスティッジ・レーベルからである。

1. If I Were a Bell
2. You’re My Everything
3. I Could Write a Book
4. Oleo
5. It Could Happen to You
6. Woody ‘N You

Miles Davis(tp)
John Coltrane(ts)
Red Garland(p)
Paul Chambers(b)
Philly Joe Jones(ds)

尚、1.~4.が10月、5.と6.が5月の録音である。

If I Were a Bell

1曲目のIf I Were A Bellは、先ずマイルスがダミ声で、「先に演奏して、後から曲名を教えるよ」と言い、指を鳴らしてのカウントから始まるスタンダード・ナンバー。誰もが知っている曲なのに、演奏してから曲名を教えるというマイルスの一言は軽いおふざけなのだろう。

鐘の音を模したピアノとドラムの演奏で始まり、マイルスのミュート・トランペットが可愛らしくユーモラスな音色で旋律を奏でる。この曲でも、マイルスの歌心は全開だ!!

レッド・ガーランドのピアノは、アルバム全体でみても文句の付けどころの無いデキなのだが、この曲でも非常に心地良くチャーミングな演奏だ。ソロ・パートでは、右手のシングル・トーンがリズムに乗って快調に走る。途中でブロック・コードで盛り上げるところも好いし、そのところ処のフレージングにはブルージーな味わいもある。

それから、ポール・チェンバースのベースも例のごとく力強く安定していて、聴き手にまったく不安感を与えない。

ちなみに、この曲はフランク・レッサーの有名なミュージカル・ナンバーだ。

You’re My Everything 

このYou’re My Everythingでは、スタート時点でマイルスがレッド・ガーランドが美しいシングル・トーンで弾き始めたのを中断させて、「ブロック・コードで頼むよ」と指示する。口笛で止めるところが、なんとも粋だ。

ガーランドが凄いのはここからで、いきなりのブロック・コードを駆使して即座に見事なイントロに入るのだが、一流のミュージシャンとしては普通の事なのだろう。またガーランドは、マイルスやコルトレーンのソロのバッキングでも、その演奏の堅実さが光る。ハイ・テンポな曲も良いが、バラードなお良しのガーランドである。

ガーランドのイントロに続いてマイルスのペットが入って来ると、俄然、リラックス度がアップ、寛げる雰囲気が抜群だ。この辺の芸術性の高さには驚かされる。

この曲では、ピアノの好調さに触発されて、リズム隊のベースもドラムスも軽やかにビートを刻んでいる。

I Could Write a Book

実はこの曲が結構好きだったりする。テンポ良いガーランドから始まり、直ぐにマイルスが続く。仔馬が跳ね回るような楽しい演奏だ。

ご機嫌なノリのマイルスの切れ味の良いミュート演奏は勿論のこと、入りの音がデカ過ぎるきらいがあるが、コルトレーンもまとまった構成で長めのソロ・パートを無難にこなしている。

そしてガーランドの温かく優しい、それでいて流れるようなソロが素晴らしい。チェンバースのウォーキングがガッチリと曲全体を底支えし、ドラムのフィリー・ジョーも良くスイングしている。

尚、この曲は、言わずと知れたロジャース=ハートの名曲スタンダーナンバーである。

Oleo

この曲はソニー・ロリンズの作品。ロリンズであればカリブの青い空となるところが、マイルスとコルトレーンが演奏すると、そこには少々翳りがあるような、頑なというか神経質というか、独自の個性が反映しているのが面白い。

曲の最初に、ちょっとした音慣らしと声がけがあってから、マイルスのミュート・ソロで始まる。彼のミュートは短いパッセージを的確に吹き分けていく。

独特のリズムが特徴のこの曲では、必然的にリズム・セクションが活躍するが、特にベーシストの役割は大きい。そして途中、ソリストとベースがデュオになるところなど、チェンバースの面目躍如たるものがある。

この曲では、コルトレーンも歯切れ良くソロ・パートのデキはマイルスにも負けていない。しかし、マイルスは流石のご機嫌プレイを披露してくれる。

It Could Happen to You

ガーランドのピアノが先導して始まる、ミディアム・スローのこの曲もお気に入りの一曲だ。先に述べた様に、『リラクシン』のどの曲においてもガーランドのクオリティは非常に高い。いや「マラソン=セッション」全体を通して好調であったといえよう。

全員とも肩の力が抜けた、まさにリラックスした名演奏だが、この曲のコルトレーンは少々ぎこちなさがあって、彼のソロ・パートは無骨過ぎる感じが強い。後の巨匠も修業期間だったということか。もちろん、好き嫌いがあって正反対の意見もあるようだ。

Woody ‘N You 

このWoody ‘N Youのみで、本アルバムで唯一、マイルスがミュートを外してトランペットを吹いている。

バンドの一体感が感じられる、スピーディでクールな演奏だ。やはりマイルス、オープン・トランペットもカッコ良い。

この曲はディジー・ガレスピーのオリジナル曲だが、マイルスはディズのようにはハイノートを連発はしない。この曲でも中音域の温かな音色主体で、時折高域のアタックを挟むマイルスの奏法は大変好ましい。

マイルスとコルトレーンのアンサンブルもドライブ感があって良いし、コルトレーンのソロもマイルスに負けじと頑張っている。

演奏後の会話

最後は、Woody ‘N Youの演奏後の会話。

マイルス「(これで)OK?」
ボブ・ウェインストック「もうワンテイク(録らないか?)」
マイルス「(ムッとしながら)何で!?」 

・・・・・そんなところにコルトレーンが、「ビールの栓抜きどこ~?」

プロデューサーのウェインストックの発言に、マイルスが苛立ち気味に「Why?」と問い返すのだが、そこに、喉が渇いてビールを飲むことしか考えていないコルトレーンが「栓抜きどこ?」と、天然ボケなのか、意図して緊張を和らげるつもりなのかは解からないが、非常に呑気なことを言っているのが微笑ましく、後のあのストイックぶりは微塵もない。

 

『リラクシン(Relaxin’)』は、モダン・ジャズの入門盤としてとても最適な一枚。しかし、ベテラン・ファンにも評価され続けている最高の名盤の一枚でもある。 

最後のところで、ちょっとムッとしたマイルスに対して、とぼけた味のコルトレーンの言葉で終わるなんて、これはボブ・ウェインストック(プレステッジのオーナー/プロデューサー)の深淵な狙いなんだろうか・・・!?。

-終-

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