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【国鉄三大怪事件 -1】下山事件の謎 第1回 〈1031JKI51〉

遡ること同年1月23日に実施された戦後3回目(日本国憲法施行後、初めての総選挙)の第24回衆議院議員総選挙では、選挙前の予想に反して吉田茂率いる民主自由党が単独過半数の264議席を獲得したが、世論の左右分極化が顕著であり、日本共産党も4議席から35議席へと大いに勢力を伸張させたのだった。

その為、共産党系の全日本産業別労働組合会議(産別会議)や国鉄労働組合も上記の共産党の躍進などに伴い、件の人員整理に対して激しい抵抗活動を展開、政府・吉田内閣の打倒と人民政府の樹立を公然と宣言していた。またこうした官員(公務員とそれに準ずる人員)の整理・解雇に関する動向は当然乍ら民間にも影響・波及することが予想され、この為に世情は大幅に混乱・騒然としており、全国的に大規模で深刻な労働争議が頻発していた。

※共産党の徳田球一、野坂参三らは「9月までに吉田内閣を打倒し、人民政権を樹立する」と発言、「9月革命説」が公然と国民の間で語られるようになっていた。

※民間でも多くの労働争議や公安事件が勃発。以下は一部だが、日本製鋼広島製作所では1,500名の従業員が人民政府の樹立を叫んで工場を占拠(『広島日鋼争議』)、また前年末からの東芝の加茂・川岸工場での闘争や堀川町工場での大規模な人員整理を巡る労働争議は史上名高い。更に同年6月30日には福島県平市(現いわき市)で炭鉱労働者や共産党員、そして支援の市民により警察署が占拠され、赤旗が振られる『平事件が発生している。

人民電車事件

また国鉄の初代総裁に就任した運輸・鉄道官僚の下山だったが、当初はこの総裁職には民間からの登用も検討されたと云うが、こうした空前絶後の大量の人員整理を推進する役目を進んで引き受ける者などは何処にもいなかったとされる。そこで仕方なく責任をとる形で、鉄道省出身の重鎮官僚であり前運輸次官であった下山が総裁となることを了承したのだった。更に本人は、この国鉄総裁職については当該の大規模人員整理に関わる間の一時的な人事であり、ことが終わったら直ちに辞任する覚悟であったとも伝わる。

また当時、連日の様に過激な組合の行動が国鉄当局を襲った。6月9日からはストライキが実施され、一部地域では組合員により赤旗を掲げ乍ら電車を走らせる『人民電車事件が発生している。

※国鉄労働組合はかねてから人員整理に関して頑強に異を唱えており、既に1949年2月には反対闘争に突入し全国規模の活動を強めていた。同時期の国鉄現場では常に労使間の激しい対立状態が続き、頻発する違法ストや組合員の処分問題等で騒然としていた。

※『人民電車事件』は、ダイヤ改正による車掌勤務の新交代制の実施に、定員削減に繋がるとして反対した組合側(神奈川・千葉の車掌区分会)が、業務命令を無視して旧交代制で乗務を続けた為、国鉄は指導者を懲戒免職処分にした。これに反発した組合は、ストライキに突入する一方で4本の電車を組合の管理下で運行し、翌6月10日には電車の車体に大きく“人民電車”の文字を描き、赤旗を掲げて走行したが、11日にはこのストライキはGHQの命令で中止された。

更に6月26日、「第15回中央委員会(熱海会議)」を開催した国鉄労働組合(委員長不在の為、鈴木市蔵副委員長が最高責任者)は、最悪の場合はストを含む実力行使を振るう旨を決議していた。また『平事件に際して、宮城県から来援した警官に対して国鉄組合員が乗車拒否を行うといった騒動も発生しており、同時期には各地の国鉄路線では頻繁に列車の運行妨害事件が起きていた。翌7月中においては、微細な事案も含めると1,574件もの鉄道に対する妨害工作が報告されている。

7月2日になると、いよいよ下山総裁率いる国鉄当局と労働組合側の交渉も最終段階を迎えた。下山は鈴木副委員長らに対して話し合いの打ち切りを宣告し、交渉会場を後にする。そして遂に労使間の対立は際限なく高まり、危機は極大化の様相を見せたのである。

こうして下山総裁は、国鉄の人員整理に関する経営者側の当事者として労組との交渉の矢面に立っており、事件発生の前日である7月4日には第一次整理通告(=解雇通告、対象3万人)が行われた。そしてその翌日(5日)に、『下山事件』が起きるのである‥‥。

※7月4日、GHQはマッカーサー元帥の「共産党の非合法化もありうる」という内容の声明を発表した。非合法化を恐れた日本共産党の反体制活動の勢いは急速に削がれ、これにより9月革命の達成は幻想となって打ち砕かれていった。そして人員整理に徹底して対抗しようとしていた国鉄労働組合にとっては、それは梯子を外されたかの様な形であった。

 

次回(第2回)以降、事件の捜査状況と判明した経緯について解説を試みていく。本稿の冒頭で述べた通り、未だにその確たる真相は不明であり、本件が未解決事件であることには変わりはないが、現状において有力とされる幾つかの(死因に関する推理・推測などの)説を紹介するつもりであるので、ご期待願いたい‥‥。

-終-

続きはこちらから ⇒ 【国鉄三大怪事件 -1】下山事件の謎 第2回

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