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《ファンタジーの玉手箱》 幻術剣士、松山主水の正体とは? 〈2354JKI40〉

こうして大吉主水は祖父主水の創始した二階堂流平法を引き継ぎ、そして岩(巌)流佐々木小次郎の没後、小倉細川家に剣術師範として仕官しましたが、実際には鉄砲頭として500石を給されていました。細川家が肥後隈本(熊本)に転封後には剣術師範として800石に加増されました。また彼の高弟には藩主の細川忠利の他に、小姓頭の村上吉之丞らがいました。

 

ところで、後に細川家の客分として招かれる剣聖 宮本(新免)武蔵の強さの秘密には、敵手の実力を適格に見抜く力が挙げられます。彼は、立ち会う前に相手の実力をしっかりと調べて、自分が勝てる相手に挑んだのです。これは、一見卑怯な行いと思えますが、戦えば必ず勝つ兵法者となるためには極めて重要なことでした。負ける可能性が高い相手とは戦わないことが、負けない武芸者の鉄則なのです。

その武蔵が、事前の偵察でこれは敵わないと知り、戦わずして逃げ帰ったことがありますが、その時の相手というのが、松山主水でした。

 

実際の主水の実力の程は判りませんが、その残された逸話からは、只者ではない格段の破壊力を持った幻術剣士であったことが伺えます。

そこで今に伝わる、主水の技・術の凄さを示すエピソードを紹介しましょう。

ある日、主水が主君の細川忠利ともうひとりの高弟である村上吉之丞に対して、二階堂流平法の奥義の「一文字」と「八文字」を伝えることになりました。そこで道場では人払いがされ、3人のみが残ったのです。間もなく、道場の中でドスンという大きな物音が響いたかと思うと、細川忠利と村上吉之丞が恐怖に引き攣った顔で転がり出てきました。どんなに凄いことがあったのかは誰にも分かりませんが、さぞかし恐ろしい体験のようだったと忠利の近習たちは噂し合っていました。

また有名な逸話に、「心の一方」という念力(最近ではテレキネシスと言った方が分かり易い。超能力の一つで、意思の力だけで物体を動かす能力のこと)を使った術に関しての興味深い話があります。

まだ主水が、細川家に仕官する前のことです。江戸の千住宿の街角で、どこかの藩の侍たちと些細なことから、互いに抜刀しての喧嘩沙汰となりました。しかも相手は十数人はいたようです。

周りを幾重にもとり囲まれながら、主水は軽快な身のこなしで囲みから抜け出し、町木戸を背にして立つと、不思議な構えを見せたといいます。そして自らの刀を正眼に構え、左の手のひらを刀の棟にかぶせるように置き、そのまま微動だにしません。

しかも主水の両の眼からは、異様な気のようなものが発せられて、いっせいに斬り込もうとした侍たちは呆然としたまま立ち竦くんでしまい、どうにも体が動かせなくなってしまいました。

やがて主水は、裂帛の気合いとともに左の掌を前方に突き出すと、主水を囲んでいた侍たちは数メートルもの距離を吹き飛ばされて、皆、地面に倒れてしまったといいます。

こうして主水は、倒れこんだ侍たちを尻目に刀を鞘に納めて、後を振り返りもせずに去って行きました。

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