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保存機よ、ドラマの続きを見せてくれ〈17/38TFU03〉

北海道出身の保存機のまさかの再会。これは公園に保存してあった二つの機関車の奇跡のようなお話しです。今回はその不思議なドラマをお届けします。

まずは、栃木県真岡市に保存されていた9600型蒸気機関車(通称:キューロク)の49671です。

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栃木県真岡市の井頭公園に保存されていた頃の49671

この機関車は1920(大正9)年、川崎造船所兵庫工場で竣工、新製配置は北海道の黒松内(北海道西部、長万部の北方)でした。以後、岩見沢から函館、五稜郭、北見、滝川と道内で活躍し、1976(昭和51)年3月1日付で廃車となり、廃車後は栃木県真岡市の井頭公園に保存されました。
私が訪れたのは2007年の事でしたが、この時はまるで動物園の檻のような厳重な建屋に保存されていました。保存場所の公園も駅から徒歩では距離があるため、レンタサイクルで訪れました。「なんで、こんな北関東の町はずれに、北海道出身の機関車が?」大いに疑問に感じたものです。屋内保存のために、保存状態は決して悪くなく(部品の欠品や、錆が進行している等の事態はなく)、ただどうもホコリがひどいので、掃除をすれば見違えるようになるだろうと思いました。近くにはC11やC12等の蒸気機関車を運転している真岡鉄道があり、噂では真岡鉄道でそのうち復活させるのではないか?とまことしやかに伝えられていました。

そして2011年、この機関車を真岡鉄道が引き取るというニュースが発表されました。ただ、本格的に本線を運転するのでなく。2013年に新たに開設される「SLキューロク館」という鉄道博物館に展示されるというものでした。しかもなんと「走行できる」ことになりました。石炭を焚いて蒸気で走るのではなく、コンプレッサーで加圧空気を発生させて、数十メートルですが走行できるようにしたのです。こうして、埃をかぶってひっそりと町はずれの公園に置いてあった49671は、見事に観光の目玉として復活したのです。

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防護の金網がものものしいD51146

そしてもうーつ、こちらの写真は静岡市の城北公園に保存されていたD51146号機。この機関車は1938年11月に日本車輛名古屋工場で竣工し、札幌局に配属されました。
その後、追分、長万部、小樽築港、岩見沢と、全生涯を北海道で過ごした機関車です。そして1975年12月に最終運転を終えて、1976年に静岡市駿府城公園で保存されました。さらにその後も、2004年に市内の城北公園に移転という、保存されてもなお遍歴のある機関車だったのです。この機関車は昭和40年代末期からのSLブームでも、何度か鉄道雑誌にも登場しています。

この機関車もまた、緑もゆかりもない静岡の公園に保存されました。こちらはキューロクのように、屋根が付いているわけでもなく、露天で野ざらしでした。部品の欠品や破損がひどく、なぜかものものしい、破損除けの網があちこちにかかっていました。私が訪れた際も、ナンバープレートは木で作った偽物、運転台も欠品が多く状態は決して良くありませんでした。

そんな状況の中、2013年2月に突如、静岡市から「撤去・解体」の話が出ます。このニュースが出ると、ネット上でも撤回を求める動きが湧きおこりました。保存されているD51の中でも、比較的初期のタイプで全国でも貴重であり、北海道で走った保存機としても古番であり、解体を惜しむ声は多くありました。この運動は地元のメディアを巻き込んで大きく広がりました。当初は頑なな態度を取っていた静岡市もついに折れて3月に解体は免れたのです。

ところが、問題は引き取り先でした。鉄道車両の保存に積極的な那珂川清流鉄道保存会が引き取りに名乗りを上げたものの、輸送費の問題などで話が白紙になり、ファンをやきもきさせる日が続きました。

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真岡鉄道で運転走行するC12(真岡駅にて)

そこに、なんと真岡鉄道が名乗りを上げたのです。真岡鉄道にはD51は全く縁が無いものの(真岡鉄道の前身は、国鉄の真岡線。真岡線の機関車はC12形式が主流でした。)なんと、この両機の車歴を調べてみると、北海道で同期だったことがわかったのです。私も機関車の車歴簿をひもといてみましたが、1949年から1965年までの期間で青函管理局の所属車両の中に、五稜郭機関区に49671、五稜郭機関区にD51146の名前がしっかりと載っています。

コンプレッサーで走れるようになった、今年95歳の49671。解体直前までいって命を救われた今年喜寿(77歳)のD51146。それぞれ五稜郭と長万部に所属していた頃、彼らは函館口の函館本線で顔を合わせていた事でしょう。その両機が、再び栃木で巡り合うなんて、誰が予想できたでしょうか。北海道にSL撮影で何度も足を運んだ鉄道マニアには、感慨深いものがあると思います。公開予定は2015年11月とのこと。両機が揃って元気な姿を見せてくれることを、今から楽しみに待っています。

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