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ウルトラと団地の風景をゆく 「おもちゃじいさんのいた公園」 〈1549/3TFU29〉

ウルトラシリーズの初期の作品(ウルトラマン、ウルトラセブン)によく「団地」が登場する。昭和30年代に生まれた筆者も、子供の頃「団地」の言葉には、独特の響きが感じられていた。木造の小さな家が所狭しと並ぶ当時の住宅地のイメージの中、近代的なコンクリート作りの「団地」群は、「未来」を感じさせる光景だった。そんな素敵なところは、やはり怪獣や宇宙人が目をつけるのも、当然だろうと妙に納得したものだ。
数ある東京近郊の団地の中でも、しばしば登場するのが東京都調布市と狛江市にまたがる「多摩川住宅」だ。

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昭和30年代、東京への人口集中に伴う深刻な住宅難に対処するため、大規模な集合住宅の建設が求められた。そこで、この地が「多摩川住宅」建設用地として選ばれた。昭和39年(1964年)度に建築工事が着手され、3期にわたる期間を経て、昭和43年度(1968年)に「多摩川住宅」が完成した。
多摩川住宅は、敷地は33万4,000平方メートル(東京ドーム8個分)、賃貸住宅1,826戸、分譲住宅2,048戸、計3,874戸の規模を誇る団地で、12階建ての高層建築(ロ-16号棟)、大型店舗(伊勢丹ストア)、ショッピングモール、野球場、テニスコート、児童公園、そして小学校、中学校をも敷地内に含む、公社初のマンモス団地だった。昭和44年5月には、なんと皇太子殿下(現:天皇陛下)が視察に訪れらた。20150927_173739

それから50年近くが経った。さすがに建物の老朽化は否めないものの、全体の雰囲気は昭和の時代と全く変わっていない。整然とした光景は、ここだけが、特殊な空間のようだ。敷地内の道路は車も少なく、住人も高齢化が進んだためか、昼なお静かである。ゆっくりと記憶の旅に出られそうだ。今回のウルトラセブン撮影時は昭和42年。当時は新築1年目の、真新しい団地だ。

20150927_170829多摩川住宅までは、京王線の調布駅からのバスが利用しやすい。調布駅南口のバス1番のりばから「調01系統・多摩川住宅」行きに乗り、約15分。料金は210円。「多摩川住宅中央」バス停を下車すれば、そこは昭和の光景が広がる異次元の世界。どこを見回しても、団地・団地・団地。ウルトラの場面の数々が目に浮かぶようだ。あちこちに、古びたコンクリートの肌をさらした特徴ある形の給水塔がぬっとそびえたっている。この給水塔が多摩川住宅の象徴ともいえ、ウルトラシリーズにはしばしば登場する。20151011_133043

さて、第1回の今回は、ウルトラセブン第9話「アンドロイド0指令」の旅をする。
話のあらすじは、まずポインターで夜の街をパトロール中のフルハシ隊員が謎の女性に襲われた。
モロボシ・ダンを狙って現れたその女性の正体はアンドロイド「ゼロ・ワン」。(金髪のかつらをかぶってまるで人形のような表情をした小林夕岐子さん演じるその謎の美女の姿は、今でもマニアの間で人気が高い。そのルックスは現代でも、十分斬新な美女と思う。)彼女からむしりとったブローチから、「アンドロイド0指令」であることが解読され、キリヤマ隊長の指揮で、ダンとソガの両隊員は女を探しに、ポインターで出動する。

この先は、ドラマのタイムラインに合わせて、追っていくとしよう。実際にDVD画像等を見ながら読んでいただくと面白いだろう。20151010_163344

5:37
急に、武器のおもちゃで遊ぶ子供たちのシーンから始まる。倒れ方も、迫真の演技。
銃の音は、ライフルのようだ。このおもちゃで、そんな音がするのか?
舞台となる公園は多摩川住宅中央からほど近い、「ロ-11号棟」近くの現存する小さな公園である。写真の地図でロ-8からロ-15に囲まれた緑のスペースがそこだ。

5:48
20151011_132646丸い穴を通して、ポインターが向かってくる場面。この丸い穴は、公園にある壁を通して写されたもの。撮影した公園には、今はその「穴」は無くなってしまったが、多摩川住宅内の他の公園には、今もその「仲間」が残っている。写真がその様子。この穴から、ポインターを狙ったアングルとしては、未来的でCOOL!IMG_0806

5:51
「あ、ポインター号だ!」子供の声。ダンとソガがポインターを停めたのが、この道。
奥に「多摩川住宅中央」のロ-16号棟、12階建ての建物が見える。放映時の画面にはない。(しかも、耐震改修工事が困難との理由で、取り壊される)周囲の木々も50年近く経過して、だいぶ緑が濃くなった。

6:07
「かっこいいなあ」子供たちの声の中、ダンとソガが歩く姿をカメラが追う。
画面左にロ-13号棟、そこからロ-10号棟に二人は歩く。画面前を、オレンジ色の丸い遊具がよぎる。「回転式ジャングルジム」。この公園から撤去されてしまったが、「仲間」がト号棟」近くの公園で発見できた。20151011_133036

6:10
ソガの左の建物の壁面に「ロ-10」と黄色で表記されている。この表記は当時と変わってしまった。
今は、表記の位置が、かなり上方に、しかも黒で書かれている。IMG_0801

6:12
カメラが公園を上から見下ろす。「ロ-10」がはっきり見える。公園は、遊具が撤去されたり、植栽が伸びたりしたことがよくわかるが、間違いなくこの公園である。(写真は近くの建物の階段から許可を得て、撮影)白い遊具の「仲間」は、こちらも現在の「ニ号棟」近くの公園で発見できた。白い、ムーミンに出てくる「ニョロニョロ」みたいな形をしている。20151010_163516

ところで女?いないぞ。ダンとソガが探しているのは、女なのでは?周囲の子供たちを見ると、皆、同じワッペンを付けている。おもちゃにも同じマークが付いている。フエルトで作った手作り感満載のワッペン。
ブローチにあったマークと同じデザインである。(なんとなく、ウルトラ警備隊のマークを意識しているか?)

6:39
「どこで買ったの?」(ダン)
ソガの左の建物の壁面に「ロ-10」と黄色ではっきり表記されている。
「おもちゃじいさんだよ」(子供1)
「おもちゃじいさん?そのワッペンも?」(ダン)
「おもちゃを買うとオマケに付けてくれるんだ」(子供1)
「あそこにいるよ、ほら!」(子供2)IMG_0808

子供の指した方向、30メートルほど先。
リヤカーでおもちゃを売るじいさんの姿があった。
子供以外にも、中年男性や主婦にも大人気のようだ。
この画面、公園の真ん中あたりから、ロ-15号棟を望む方角。

「さあ、今度はこのジェット機が空を飛ぶよ。」(じいさん)
何やら、念力のようなものをかけて、ダンとソガの目の前で、デモンストレーションをするおもちゃじいさん。
おもちゃの飛行機がジェットを吹いて飛行する。背景にロ-15号棟らしき建物が映り込む。じいさんが、ふたりに気がつくと、飛行機は失速。

7:22
じいさんに近づくダンとソガ。
背景にロ-9号棟が左、ロ-8号棟が右に見える。
この写真。ここから画面に向かって子供たちに囲まれながら、二人は向かってくる。地面は整備されたが、雰囲気は全く変わっていない。IMG_0800

「や、ありがとう。」飛行機を拾ってもらったじいさん。
「…今日はおしまいに、しようかな…」(じいさん)
そそくさと立ち去るおもちゃじいさん。
「尾けてみよう」(ダン)
ここで8:10付近。

この場面までが、多摩川住宅での撮影。このあと、貨車の連結シーンから始まる引き込み線に画面が変わり、有名な夜のデパート「松屋」の無人の屋内を使ったおもちゃから襲われるシーンへと展開する。23:20から23:25にかけて、おもちゃじいさんがデパートの屋上でチブル星人に姿を変えるシーンは秀逸だ。
最後は、人間の大きさのウルトラセブンがエメリウム光線でやっつけて、おしまい。

「夜のデパート」の印象が強い作品である。しかし、昼と夜の対比、大勢の子どもの姿と、持ち主のいないおもちゃの対比という点で、この話の団地の存在は大きいように思う。
多摩川住宅をロケ地にした話は、他にもまだまだ登場する。高度成長期の象徴ともいうべき、「マンモス団地」の風景も記憶にとどめておきたい。多摩川住宅にも、建て替えの話が進行しているのだ。この風景も、遠くない将来に地上から消える。都心からわずか30分で、一気に昭和40年代に時間旅行ができる。その光景の中で、「ウルトラ」の姿を探す旅。次回も、楽しみにしてほしい。

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