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【アメリカ選挙事情】 スーパーPACという名の怪物!? 〈1254JKI24〉

スーパーPACの問題点と今回の大統領選挙

現在では、多くの候補者がスーパーPACとメガ・ドナーを活用する手法を用いてはいますが、この手法には強い批判もあります。それはスーパーPACを経由した政治献金の大部分が、一部の大企業経営者や大手の労働組合、そして少数の富裕層からのものである事が明らかになってきたことによります。

メガ・ドナーたちは献金を行うと共に候補者の選挙キャンペーンも手伝い、そして当然ながらその候補者の政策に自らの意志を反映させようとします。つまり「金も出すが口も出す」のスーパーPAC圧力団体化が進み、これが現代アメリカの民主政治が「金持ちの、金持ちによる、金持ちのための政治」に堕落してしまった原因の一つと、一般有権者に認識され始めたのです。

またスーパーPACへの献金額には上限はありませんが、その献金の寄贈者名と金額は定期的に連邦選挙委員会に報告する義務があります。しかし多くのスーパーPACは巧妙な法的手段により、選挙後まで献金者リストの公表を引き延ばしているようです。そしてこの点でもスーパーPACは批判に晒されており、やましい事がないのならば直ちにリストを公表するべきである、との指摘が為されているのです。

ところで各候補者とスーパーPACはどうやって意志疎通を実施するのでしょうか? 建前としては、直接のコミュニケーションは避けて、互いにメデイアを通して意見を述べ合い意向を表明するという決まりになっています。しかし現実には、或る候補者の場合は自分の選挙事務所と自身を応援するスーパーPACの事務所を同じビルの階数違いのフロアに設置しているという話もある位ですから、この規則は固くは守られてはいないようです。

しかし本来のスーパーPACは、既述の通り、その資金を彼等の支持する候補者と直接的に連携させてはならないとされており、あくまでもその候補者からは独立した外部団体として候補者を支援していくのが正しい姿とされているのです。

更にスーパーPACは、無制限に資金を集めることが許されており、巨額を投じてテレビCMなどを活用した選挙キャンペーンを実施していますが、そのプロモーションの内容において特徴的なのは、支持対象の候補者の良さを知らしめるタイプの宣伝というよりは、対立候補者を貶めるネガティブなキャンペーンが多いことで、このあたりの活動手法も批判の対象となっているのです。

 

今回(2016年)の大統領選挙でも、ヒラリー・クリントン氏が「Priorities USA Action」、テッド・クルーズ氏が「Keep the Promise」、そしてマルコ・ルビオ氏が「Conservative Solutions PAC」など、主要候補者の多くがスーパーPACを活用した選挙戦を展開してきました。

ところが、ドナルド・トランプ氏は自己資金を用いて選挙戦を戦っており、バーニー・サンダース氏はSNSやインターネットを介した社会運動型の選挙を展開することで小口献金を積み重ねる手法を用いています。

特に、既に共和党の大統領候補指名を勝ち取ったとみられるトランプ氏は、「スーパーPACは腐敗の象徴」であると批判し、自己資金のみで選挙活動を運営しています。また彼はこれまでにシェルドン・アデルソン氏(ネバダ州ラスベガスの企業ラスベガス・サンズの会長兼CEOで、不動産開発業を営む実業家)、チャールズとデイヴィッドのコーク兄弟(石油や化学製品、日用品等の総合企業であるコーク・インダストリーズのオーナー)、ポール・シンガー氏(ヘッジフ ァンド運用会社エリオット・マネジメントを率いる投資家)などの共和党系のメガ・ドナーたちを繰り返し批判してきました。

トランプ氏の主張は「This whole Super PAC scam is very unfair to a person like me who has disavowed all PAC’s & is self-funding(スーパーPAC詐欺というものは、私のように自己資金で選挙を戦い、すべてのPAC経由の献金を拒否している候補者にとっては非常に不公平である)」や「All Presidential candidates should immediately disavow their  Super PAC’s. They’re not only breaking the spirit of the law but the law itself. (すべての大統領候補者は、ただちに彼らのスーパーPACを否定すべきである。PACは法の精神に反しているだけではなく、法律そのものに反している)」というものです。

この様に、スーパーPAC自体が違法であるとして、その支援を拒否していたドナルド・トランプ氏に対する共和党の対立候補を支持するスーパーPACからのネガティブ・キャンペーンは凄まじいものがありましたが、トランプ氏の場合、本人が大富豪である為にスーパーPACからの献金に依存しない姿勢が、序盤戦で多くの有権者の支持を集めた事は間違いないとされています。

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