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『ニシオンデンザメ』の長寿の秘訣は、「のんびり」とした生活!? 〈347JKI18〉

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『ニシオンデンザメ』、グリーンランドのウマナック・フィヨルドで撮影。(photograph by Julius Nielsen)

8月12日付の米国の科学誌『サイエンス』に発表された論文によると、『ニシオンデンザメ (西隠田鮫、学名:Somniosus microcephalus、英名:Greenland Shark)』 を対象にした「放射性同位体分析」の結果、この鮫(サメ)の中でも全長5メートル余の雌(メス)の年齢が約400歳にも達していることが判ったという。

このことは、デンマークのコペンハーゲン大学のジュリウス・ニールセン博士らの研究チームによる、北大西洋北部・グリーンランド沖での調査で判明した。

 

『ニシオンデンザメ』は、ツノザメ目オンデンザメ科に属する鮫(サメ)で、北大西洋海域全般と沿岸の大陸棚地帯に生息、また英名の通りグリーンランドの近海でも多く見られる。そしてこ鮫(サメ)は同属・近縁種の『オンデンザメ』と同じく本来は深海性であるが、緯度が高い(北方)の低水温域であれば、比較的浅い海域にも餌(エサ)を求めて浮上して来る。その体型は、体長に比して鰭(ひれ)が小さく、やや太めで横幅のあるズングリとした姿をしていて、体色は主に灰色である。

その行動の特徴としては、『ニシオンデンザメ』は低温域に生息している為に筋収縮速度が遅く、泳ぐ速さも時速1km程度と大変遅い。同じ鮫(サメ)の仲間に限らず、他の大型魚類の中でも極端にゆっくりと泳ぐことで、「世界一のろい魚」(日本の国立極地研究所)と評されることがある。

しかしその食性は多彩であり、魚類や底生性動物以外にもアザラシ等の大型動物をも襲うことが胃の内容物から判明している。だが上述の通り極めて動きが鈍い為に、自ら積極的に獲物を追うのではなく、待ち伏せや不意討ちといった方法で狩りを行うと考えられているが、驚くべきことにトナカイやホッキョクグマ、人骨までもがこの鮫の胃袋の中で発見された例がある。

つまり何でも食べて巨体化する『ニシオンデンザメ』は、本来は非常に危険な海洋動物であるが、その生息域が低温海水域に限定されるので、人(ヒト)に直接害が及ぶことは少ないとされている。

 

さて通常、硬骨魚類の場合はその年齢は耳石(木と同じように年輪が刻まれる骨)で判別するのだが、鮫(サメ)は軟骨魚類の為、この測定方法は使用出来ない。そこで今回の調査では、体長が0.81m~5.02mの28頭の雌(メス)の『ニシオンデンザメ』を捕獲、その眼球の水晶体を対象に、「放射性同位体分析法」を用いて実施された。

結果は、『ニシオンデンザメ』が性的な成熟を迎えるのは少なくとも156歳前後になってからであり、調査したサンプルの中でも最も体長の大きなもの(5.02m)の年齢は392歳前後、次位の体長4.93mの個体は335歳前後であると判明し、平均寿命は少なくとも272歳とされた。

今迄は専門家の間でも、『ニシオンデンザメ』は大きな個体では体長が5~6mにも成長するが、逆に1年間で成長するのは約1cm程度と非常に遅いとされ、おそろしく長寿であろうことは推測されていたが、正確な調査・研究は行われておらず、その年齢や寿命については謎に包まれていたという。

これまでの調査結果から判明していた最長寿の脊椎動物は、『ホッキョククジラ』の211歳であった。今回の調査・研究により『ニシオンデンザメ』が地球上の脊椎動物の中では、(現在のところ)最長の寿命を持つ動物であることになり、無脊椎動物を含めても『アイスランドガイ』の507歳に次ぐ記録となった。

更に『ニシオンデンザメ』の最大体長に関しては、7mを超えることもあるとする資料もあり、国際自然保護連合(以下、IUCN)のレッドリスト(IUCNが作成した絶滅の恐れがある野生生物のリスト)の附属資料には「少なくとも6.4メートル」と記載されており、そうなるとこの鮫(サメ)の最高年齢はまだまだ高いと考えて間違いないと思われる。

またニールセン博士によると、今回の調査で裏付けられた危惧ポイントとしては、『ニシオンデンザメ』の雌が成熟するまでにかかる時間が150年以上だとされる点だ。何故ならば近年、『ニシオンデンザメ』の数は急速に減少しており、成熟するまで長い時間がかかることがその大きな要因のひとつと考えられるからだ。

現在 IUCNでは、『ニシオンデンザメ』は『ホホジロザメ』や『ジンベエザメ』などよりも下位のレッドリスト・カテゴリーである「準絶滅危惧種/近危急種」(Near Threatened)に区分されているが、『ニシオンデンザメ』の寿命がこれ程までに長い(種の存続上、環境の影響がより大きくなる)とすれば、この鮫(サメ)に対する保護の優先度を上げるべきだ、との議論が活発化することだろう。

 

人間でも長寿の為には、何事にも「あくせくせず」にゆとりを持った生活を送ることが大切だと云うが、まさしくこの鮫(サメ)にも同じことが言えるのではなかろうか。長寿の秘訣は、「のんびり」とした生活習慣? にあるのかも知れない(笑)。

また今回の調査の結果、392歳前後だとされた『ニシオンデンザメ』の個体は、我国で云えば江戸時代の初期(寛永年間)、欧州では30年戦争が戦われ、北アメリカ大陸ではヨーロッパからの植民が始まった頃に誕生したこととなる。

400年も前に生まれた動物が現在でも生き続けていることに改めて驚きを禁じえない上に、その様な長寿の種である彼らを、環境破壊や乱獲などで絶滅させることなどがあってはならないと強く願うのだが・・・。

-終-

 

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