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【ライバル対決】 独軍 シュビムワーゲン vs 米軍 フォードGPA 〈3JKI07〉

“ヨッヘン”・パイパー(“Jochen” Peiper)とシュビムワーゲン

前回の【ライバル対決】では 、(独軍)“キューベルワーゲン”と(連合軍)“ジープ”の対決を取り上げたが、今回は其々の水陸両用車ヴァージョンである“シュビムワーゲン”と“フォードGPA”に触れてみようと思う。

この両車ともが、第二次世界大戦を代表する小型の水陸両用タイプの軍用車両であることには間違いないが、“対決”という観点からは何れが勝者となるのだろうか?

 

シュビム(シュヴィム)ワーゲン(Schwimmwagen)は、第二次世界大戦中に独軍が使用した4輪駆動の水陸両用車で、大戦中に最も大量に生産された小型軍用の水陸両用車輌の一つでもある。制式名称は「Leichter Personenkraftwagen K2s(4×4)Volkswagen“Typ 166”(軽乗用自動車 K2s〈4輪駆動〉フォルクスワーゲン 166型)」と言い、その水陸両用の性能から「シュビムワーゲン(Schwimmwagen、英語ではSwim car、即ち「泳ぐ車」)」または「シュヴィマー(Schwimmer、英語ではSwimmer「泳ぐ人・水泳選手」)」と呼ばれた。

戦場でのシュビムワーゲン

このシュビムワーゲンは水陸両用車としてはもっとも成功した軍用車の1台で、1941〜1944年までに総数14,276台が生産された、キューベルワーゲンの“Typ82”をベースに開発された軍用車両である。

その構造の複雑さから高コスト体質ではあったが、製造がし易い優れた設計と高い生産性によりそのトータル生産数が1万台を超えたと云われる。

 

さて独軍は、ポーランド侵攻戦以降の戦訓から将兵数名が乗車したままで河川を渡河できる小型の水陸両用車輌の必要性を強く認識し、1940年6月には陸軍兵器局の開発・試験部第6課(WaPrüf 6)が、ポルシェ社にキューベルワーゲン“Typ 82”をベースとした同種(水陸両用種車輛)のプロトタイプ車輌の設計を指示、同年7月よりポルシェ社とハイルブロンのダンツ社において水陸両用軍用車輌の開発・製造が開始され、これがシュヴビムワーゲン“Typ 128”として1940年中に完成した。

最初の“Typ 128”は、1940年9月以降、陸軍工兵部隊に試験配備されたが、実用試験の結果、水陸両用車としての車体安定性や不整地走破性等が不充分である事が判明する。

シュビムワーゲン“Typ 166”

そこで改めて整備性能や走破性の向上を目的とした改良型シュヴビムワーゲン“Typ 166”が設計されて、1941年8月にその試作車が完成した。

この“Typ 166”は、“Typ 128”と比べて軸距が40cm縮まり、長さが37.5cm、幅が14cmほど小さくなった。更に翌1942年には、ボデイ寸法をよりコンパクトにし、幅広タイヤに履き替えた改良型の“Typ 166”が開発された。

※改良型のTyp 166”には幅広の専用タイヤが設定されていたが、当時のゴム等の工業資源の欠乏により、キューベルワーゲンと同じ5.25-16サイズのタイヤを装着した車輌も多く見られた。

水上航行中のシュビムワーゲン

この車両のキューベルワーゲンとの違いには、その駆動形態が4輪駆動(4WD)となったことがあり、搭載エンジンも1,131cc(24.5馬力)に強化された水平対向型を搭載していた。更に大きな相違点としては、防水性に優れたドアの無いバスタブの様な構造によって水上走行を実現したことがある。その車体は非常に高い気密性を持ち、後部には着脱式の3枚翼のスクリューとそれを駆動させる為のエンジンと連結されたクランクシャフト・プーリーが装備されていた。

通常、陸上ではそのスクリュー部を跳ね上げて行動していたが、水上走行を行う場合にはそれを降ろし、既述のシャフトと連結して使用する機構となっていた。また水上走行を前提としてマフラーやエアクリーナーの位置が高く設定されており、エンジン不良や被弾などによる非常時のトラブル対応としてはオール等を装備していた。

またこのスクリューを利用した水上走行時は、約10km/hでの航行が可能であり、陸上の整地路上での最高速度は時速80kmもあった上に、悪路走破についても4輪駆動の採用が功を奏してキューベルワーゲンよりも数段上の実績を残したとされる。

実戦投入されたシュビムワーゲン

この改良型の“Typ 166”に関しては、1942年春~夏にかけて先行量産車によるテストを実施、同年の秋頃から本格的な量産が開始された。

そして改良型“Typ 166”の実戦部隊配備が始まったが、武装親衛隊(SS)からオートバイ歩兵部隊で使用しているサイドカーをこの水陸両用車と優先的に置き換えたいとの強い要望があり、当初はSS装甲師団所属のオートバイ歩兵大隊を中心に配備された。

こうしてサイドカーよりも乗車定員・貨物積載量、そして不整地走破性に優れたシュビムワーゲンは、偵察・索敵部隊が河川や湖沼を渡って強行偵察を実施したり、急遽、堤防橋梁下の水面に進入して作業する必要がある戦闘工兵などの為に、武装親衛隊を筆頭に装甲部隊の捜索大隊や各級司令部付の(戦闘)工兵中隊などの高い機動力を要求される部隊をメインとして配備されていくが、その要望数に対して生産数が充足することはなく、キューベルワーゲンほどには広範囲の各部隊に行き渡る事は無かった。

水中に進入するシュビムワーゲン

また地域的には、河川が多く季節によってはあっと言う間に泥濘状態となる東部戦線の諸戦域や、同じく河川・運河や湖沼の多い西部戦線北域(フランス北西部~北部やベルギー・オランダ等)などで、重点的に運用された。

だが1944年8月、連合軍のベルリン爆撃により、当該車輌やキューベルワーゲンの車体製造を請け負っていたアンビ・バッド・ヴェルケ(Ambi-Budd)社の工場が破壊された事で、事実上シュビムワーゲンの生産は不可能となり、これ以降はヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン社の工場において残存の部品を使ってごく少数が組み立てられただけに止まったとされている。

【シュビムワーゲン“Typ 166” 性能諸元】
設計:ポルシェ社
開発:ポルシェ社、ダンツ社
製造:アンビ・バット社、フォルクスワーゲン社
製造台数:1944年までに14,276台
エンジン性能:空冷式4気筒、排気量 1,130cc、25馬力
最高速度:80km/h
ギア/トランスミッション:前進4段 後進1段の2輪駆動ながら超低速ギヤ時には4輪駆動での走行が可能
水上走行:3枚翼のスクリューを手動で下げクランクシャフトと連結して回転させる方式により約10km/hで走行が可能

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