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【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第2回、『コンバット・アメリカ』と 『戦略爆撃指令』〈18JKI15〉

連載2回目の「映画の中のB-17爆撃機:フライング・フォートレス(flying fortress)」特集、今回は実際の戦闘でB-17に搭乗して出撃したことのあるハリウッドの映画俳優、クラーク・ゲーブルを主人公に据えた作品を紹介します‥‥。

※連載第1回はこちらから ⇒  【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第1回、『空の要塞』と『空軍/エア・フォース』 〈18JKI15〉

※連載第3回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第3回、『頭上の敵機』〈18JKI15〉

※連載第4回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第4回、『戦う翼』と 『空爆特攻隊』〈18JKI15〉

※連載第5回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第5回、『最後のミッション』と『メンフィス・ベル』〈18JKI15〉

※連載第6回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17の登場する映画 第6回、『フライング・フォートレス』と『マイティ・エイス/第8空軍』〈18JKI15〉

 

『コンバット・アメリカ』(Combat America/1945)は、映画俳優クラーク・ゲーブルが企画制作・ナレーションを担当した戦争ドキュメンタリーで、当時のアメリカ陸軍航空部隊により製作された訓練兵と戦争債募集の為の作品です。欧州戦線での第8空軍の活動を描いたもので、実際のB-17爆撃機隊の飛行(戦闘)場面と多くの従軍俳優本人や現実の著名な高級軍人が登場している様ですが、これも筆者未視聴の作品です。テクニカラーで撮影されている様ですが、日本国内で入手出来たとしても(資料映像扱いの為)当然ながら翻訳字幕等は付いていないでしょう

※『或る夜の出来事』や『風と共に去りぬ』で知られる映画俳優のクラーク・ゲーブルは、1942年にアメリカ陸軍の航空隊に入隊しますが、アメリカ軍は当初、彼を軍役には着かせるものの、実戦には参加させずに慰問部隊の一員として従軍させるつもりでした。しかしゲーブルはこれを拒否し、将校として欧州戦線でB-17に乗組み数度の出撃を行い、これらの勲功によって空軍殊勲十字章などを授与されています。またこうした背景からアメリカの軍部と政府は、ゲーブルを戦意高揚の為のプロパガンダ映画やニュースに大いに利用したのです。ちなみに、ゲーブルの従軍を知ったドイツ軍は、彼に5,000ドルの賞金を懸けたとも云われています。 

 

『戦略爆撃指令』(Combat Decision/1948)は、第二次世界大戦時のアメリカ軍によるドイツ昼間爆撃作戦を題材に、指揮官の苦悩やパイロットらとの確執を描いたヒューマンドラマです。MGMの作品で監督はサム・ウッド(Sam Wood)、主なキャストは、主演のケイシー・デニス准将をクラーク・ゲーブル(Clark Gable)、デニスの上官ケイン少将役をウオルター・ビジョン(Walter Pidgeon)、またデニス付きの下士官エバンスに人気俳優のヴァン・ジョンソン(Van Johnson)が配されています。

ストーリーの概略 独軍が秘密裏に開発した強力なジェット戦闘機(Me262がモデル)を生産中であることが判明して、この戦闘機の存在が今後の戦争の行方を左右しかねないと判断した主人公のデニス准将は、独断でこの戦闘機の秘密工場への3段階の攻撃計画“ステッチ作戦”を企図し、実行に移します。しかし従軍記者に対しても事実を隠蔽しながら進められていく作戦は、大変危険な任務でした。

そしてあまりに損害が多く、また誤爆等の発生の為、上官らを交えてこの“ステッチ作戦”の継続を検討する場面が、上記の通り前半の山場となっています。その結果、一旦継続実施の命令を得て空爆は再開されますが、視察団の政治家との確執やデニスの親友である飛行隊司令マーティン大佐の̪死などの多くの犠牲を受けてデニス准将は解任されてしまいます。しかし後任のブライアン・ドンレヴィBrian Donlevy)演じるガーネット准将が苦悩の末にデニスの意思を継ぎ、作戦を続行させる決断を下すのでした。(その後の作戦の結果は描かれていません)

しかも解任されたにも拘わらず、何故だか急遽デニス准将は太平洋戦線のB-29部隊の指揮官に栄転、映画の最後には急ぎ輸送機に乗り込み極東へと赴くのでした。(やはり残念ながら、唐突な終わり方/エンディングと云って良いでしょう)

尚、この映画は、ほとんど爆撃や空戦等の戦闘現場を観せることはなく、決死の爆撃任務に就くB-17搭乗員達の恐怖やその心情等よりも、部下達を死に追いやる命令を下さざるを得ない指揮官側の苦悩と、それでも最終的な戦争の勝利(大義・大局)の為に作戦の続行を選択する姿を描いています。

また本作に登場するB-17爆撃機に関しては、実戦の記録映像と(制作年代が戦後間もないので)実機を用いた実写映像がありますが、尾翼のマーキング等には多くの異なるタイプや部隊のものが見られ、様々な映像資料を切り貼りにしていることが想像されます。また一部には明らかに模型を使用したと解る低レベルの映像も認められて興ざめしますが、さすがに記録映像の部分ではリアルな戦闘シーンを体感出来ます。そして実機を使用した場面では、物語前半のパイロットが負傷して代わりの搭乗員が操縦して着陸を敢行するシーン等の見所は高く、当時としては手に汗握る映像となっています。尚、これらの事柄は、ほぼ同じく次年の映画『頭上の敵機』にも云えることですが‥。

第96爆撃群の嚮導機MZ-FとMZ-T(1944年1月撮影)

ところでこの映画の根本的な疑問点は、独軍の秘密兵器であるジェット戦闘機の価値がどれほどのものか? という点(映画内では相当に杜撰で陳腐な説明が為されている)と、主人公デニス司令官の立場・階級(航空群の司令か、より上位の航空団の司令官かは不明ながら劇中での階級は准将ですから、上官である、たぶん第8空軍司令官のケイン少将の言動からも、デニスは爆撃航空団の司令官なのかも知れません)で、現実に“ステッチ”作戦の様な重大で且つ大胆な計画を上層部に秘密裏に進めることが可能か? ということです。たとえ秘密兵器の工場を壊滅に追い込む事が必要とされても、一介の准将が勝手にあの様な作戦を進めることは不可能と思われ、上官に知られれば単なる解任どころでは済まないでしょう。そしてこの為か、鑑賞後にはどうしてもご都合主義の展開と結末の唐突さ・尻切れトンボ感が拭えません。

※次回の連載で扱う『頭上の敵機』では、准将の主人公が臨時に本来は大佐クラスが司令を務める爆撃航空群(Bombardment Group)を指揮しますが、准将であればより上位の部隊である爆撃航空団(Bombardment Wing)や更にランクが上の第8爆撃機兵団(VIII Bomber Command)の司令官であることが通常だろうと考えられます。

更に、後(翌年)に制作された映画『頭上の敵機』と比べると、出演俳優の顔触れはともかくとしても、脚本・構成が舞台劇の手法を踏襲していて柔軟性に欠け、心理劇的な形をとって主人公の意志を追いかけることに終始、戦争映画の割に動的なアクション場面が少なく、舞台演劇を映画化したことがマイナス面に作用している様に思えます。特に物語の序盤、困難な作戦の継続を検討する長廻しの場面でのウオルター・ビジョンの名演技が完全に主役のゲーブルを食ってしまい、相変わらず名脇役ぶりを披露するヴァン・ジョンソンと共にこの映画の主役の座を奪ってしまったとも云え、この辺は原作が舞台劇であることからか、まさしく舞台上で行われる演劇そのものといった感じの展開なのです。

折角、実戦経験のあるゲーブルを起用したのですから、積極的に彼が指揮官先頭で空爆に赴くシーンを描けば、(主人公が出撃する)『頭上の敵機』のレベルにより近づけたのかも知れません‥‥。

※第二次世界大戦におけるアメリカ陸軍航空部隊では、小規模な部隊組織から順に、飛行隊(飛行中隊とも)を「Squadron」、次いでこの飛行隊を複数持つ航空群(大隊とも、稀に連隊との表現あり)を「Group」と呼び、この航空群を複数束ねた組織が航空団「Wing」となり、更にそれらを組み合わせた陸軍航空隊の中で単独最大規模の部隊を、(序数)航空軍「Air Force」と呼んでいました。当時の航空軍としては、欧州戦線での“第8空軍(Eighth Air Force)”や太平洋戦線での“第20空軍(Twentieth Air Force)”が有名です。ちなみに、本連載記事では、各序数「航空軍」を「~空軍」と表現する形を採用しています。これは航空軍という言葉をアメリカ陸軍内の航空部隊全ての集合体を表す使用方法としている為ですが、資料によっては“第8空軍”を“第8航空軍”としているものも多く存在します。

※第二次世界大戦中、第8空軍などでは、その傘下に陸軍准将を司令官とした戦闘機兵団(Fighter Command)や爆撃機兵団(Bomber Command)があり、航空団(Wing)の上位組織となっていました。

※アメリカ空軍においては「Wing」が「Group」の上級部隊とされていますが、イギリス空軍では逆に「Group」が「Wing」の上級部隊です。アメリカ空軍の航空団「Wing」は、陸軍においては旅団もしくは連隊に比せられる部隊の単位であり、准将または大佐によって指揮・統率され、48機~120機程度の航空機を保有しています。一方でイギリス空軍の飛行団「Wing」は、陸軍においては連隊または大隊クラスに比せられる部隊単位であり、かつては大佐または中佐によって指揮されていました。この部隊は3個ないし4個の飛行隊から編成されており、17~18機くらいから最大で48機程度の航空機を有していました。現在はアメリカ空軍と同様に、「飛行隊」の長に専ら中佐が充てられることから、「飛行団」の司令はより上位の大佐級の専任職務となっています。

※史料によっては、イギリス空軍での「Wing」は海外派遣部隊にのみ存在する組織とされ、英国本土に展開する空軍部隊にはその代わりに空軍連隊「RAF Regiment」があり、地上戦闘任務では大佐が指揮官、PFF(爆撃目標誘導部隊)が所在する基地の場合は准将が司令官でした。ちなみに、飛行隊「Squadron」の場合も、PFF飛行隊長は大佐の階級の者が務めました。

※第二次世界大戦中の英空軍では、「Group」(この場合は“飛行集団と訳されることが多い)が航空師団を上回る最高実戦部隊とされ、その司令官には少将ないし准将が任命されました。アメリカ陸軍航空部隊における序数空軍/航空軍(Air Force)と兵団(Command)の間に位置した規模と考えられています。

※アメリカ空軍では1992年までは航空師団 Air Division」 が存在しました。序数航空軍(NAF)の傘下の部隊であり、准将もしくは大佐を司令とする複数の航空団「Wing」 により構成されていました。この部隊は陸軍の旅団相当とされてその師団長は概ね准将クラスでしたが、一部には少将や大佐が充てられることもあった様です。またこの組織の廃止後は、複数の航空団「Wing」が統合されて従来の航空師団規模まで拡充されました。但し一部の資料には、アメリカ軍の航空師団は1948年以降に編成された部隊であるとの記載が見られますが、第二次世界大戦中にも存在していた旨の記録もあり、何れが正しいかは不明です。

※最小の部隊単位である飛行隊「Squadron」は、英米ともに中佐もしくは少佐が指揮官であり、その下位組織には、英空軍では編隊「Flight」(指揮官は少佐か大尉)がありましたが、アメリカ陸軍航空部隊で部隊編成上の組織ではなく、任務遂行時の運用でのみ編隊が組まれていました。

※米英の軍事組織などの呼称の和訳については各種の解釈があり、統一性に欠ける場合が多い様です。また上記にある通り、アメリカとイギリスでは同一の用語が(軍事以外でも)異なる内容を表している事も多数あり、注意が必要となります。更に海軍航空隊や海兵隊航空部隊での使用法にも留意ください。尚、米英の軍人の階級と指揮・監督する部隊規模などとの関連性は、(戦闘中の指揮官・先任将校の戦死などによる臨時代行を除く)旧日本軍の実態と比べてはるかに柔軟性が高く、日本人にはその点に関する理解が難しいことも申し添えておきます。また、階級そのものに関しても、英米においては野戦任官や戦時昇進といった制度の活用が顕著の様です。

 

連載3回目の次回は、いよいよ名作『頭上の敵機』の登場です。ディーン・ジャガー(Dean Jagger)がアカデミー助演男優賞を獲得した、第二次世界大戦下のB-17爆撃隊が舞台の傑作ヒューマンドラマと謳われた作品で、筆者にとっても思い出深い戦争映画でした‥‥。

-終-

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